プライバシーの新理論―― 概念と法の再考 の感想

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参照データ

タイトルプライバシーの新理論―― 概念と法の再考
発売日販売日未定
製作者ダニエル・J・ソローヴ
販売元みすず書房
JANコード9784622077657
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 法律 » 法学

購入者の感想

プライバシーの権利というのは、もはや学校でも習うぐらいに当たり前に権利として定着している。
しかし、いざ「プライバシーとは何か」「なぜプライバシーは守られるべきか」「どうプライバシーは保護すべきなのか」と問われると、なかなか答えづらいであろう。

プライバシーは、よく「放っておいてもらう権利(自分の行動を他者に干渉されない権利)」と言われる。
しかし、これだと「あなたを殴ること」などの権利侵害もすべて「プライバシー侵害」になってしまい、プライバシー特有の意味が失われてしまう。

例えば、公共の場で尾行や監視を続けることは、一般には非常にストレスを与えるものであり、プライバシーを侵しているとされることも多い。
しかし、公共の場にいる際に、人を見たり、同じ行き先に向かうことはどうして禁止されるのだろうか。

プライバシーの保護といっても、例えば犯罪捜査のための尋問や通話記録の調査というものも存在する。
こういう操作が逆に「プライバシーに反する」として禁じられることもありうるのであり、プライバシー礼賛でもうまくいかない。

本書では、まずプライバシーを単一の原理から説明する方針じたいが誤りであると論じ、「家族的類似」の手法をとる。
その上で、プライバシーの侵害の形態として

侵襲(侵入・意思決定への介入)
情報収集(監視・尋問)
情報処理(集約・同定・非セキュリティ状態・二次利用・排除)
情報拡散(守秘義務関係破壊・開示・暴露・アクセス可能性の増大・脅迫・盗用・歪曲)

を挙げている。
具体的な位置付けやそれを巡る問題については、本書を読んでいただきたい。

プライバシーという捉えどころのないものをかなり具体的かつ丹念に論じている良書である。
あえて難を挙げれば、扱う内容を広げ過ぎたために、さまざまなプライバシーの要素を挙げていく面が強く、「プライバシーとその他の価値との調停」のような難しい問題にはそこまで踏み込めていないのは惜しいところである。
しかし、そうした問題は本書を読んだ上で次に考えるべきものなのであろう。

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