シナプスが人格をつくる 脳細胞から自己の総体へ の感想
参照データ
タイトル | シナプスが人格をつくる 脳細胞から自己の総体へ |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ジョセフ・ルドゥー |
販売元 | みすず書房 |
JANコード | 9784622071105 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー |
購入者の感想
一般向けに書かれた本ではあるが、内容は極めて専門的であり、ある程度の脳関係の知識がないと途中でいやになってしまうかもしれない。
しかし難解で専門的な記述の箇所は半ば読み飛ばして行ってでも、この本を読んで得るものは非常に大きいと思う。
筆者の立場は徹底してシナプスが織り成す回路、それこそが脳の様々な活動を行ううえでの正体である、ということに尽きている。特に筆者が力を入れて記述している扁桃体-海馬-前頭前野の神経ネットワークの研究報告を読むと、神経連絡・シナプスの可塑性という概念こそ今後の脳科学の大きな一分野となるであろうことがよくわかる。
邦題サブタイトルにある「自己の総体」については、同様の議論で、『あなたはあなたのシナプスなのだ』という一文で終わってしまっており、一貫した主張から、確かにそのとおりであることは納得できるのだが、もう少し考察があっても良かった気がした。
また、筆者の研究分野の立場上致し方ないことではあるのだが、情動系、特に恐怖反応付けの研究由来の神経回路の説明が多い。それだけならよいのだが、情動系のシナプス可塑性の議論をそのまま前頭葉出のワーキングメモリの概念に応用している節があり、やや誤解を招きかねない箇所があった。
しかしながら、一読することで確かな知識が得られるし、近年特に多くなってきている中途半端な神秘主義的な脳・心の説明本の内容がいかに根拠のない主体的な議論にとどまっているか、ということがわかる名著であると思う。
しかし難解で専門的な記述の箇所は半ば読み飛ばして行ってでも、この本を読んで得るものは非常に大きいと思う。
筆者の立場は徹底してシナプスが織り成す回路、それこそが脳の様々な活動を行ううえでの正体である、ということに尽きている。特に筆者が力を入れて記述している扁桃体-海馬-前頭前野の神経ネットワークの研究報告を読むと、神経連絡・シナプスの可塑性という概念こそ今後の脳科学の大きな一分野となるであろうことがよくわかる。
邦題サブタイトルにある「自己の総体」については、同様の議論で、『あなたはあなたのシナプスなのだ』という一文で終わってしまっており、一貫した主張から、確かにそのとおりであることは納得できるのだが、もう少し考察があっても良かった気がした。
また、筆者の研究分野の立場上致し方ないことではあるのだが、情動系、特に恐怖反応付けの研究由来の神経回路の説明が多い。それだけならよいのだが、情動系のシナプス可塑性の議論をそのまま前頭葉出のワーキングメモリの概念に応用している節があり、やや誤解を招きかねない箇所があった。
しかしながら、一読することで確かな知識が得られるし、近年特に多くなってきている中途半端な神秘主義的な脳・心の説明本の内容がいかに根拠のない主体的な議論にとどまっているか、ということがわかる名著であると思う。