巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト (ブルーバックス) の感想

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参照データ

タイトル巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト (ブルーバックス)
発売日販売日未定
製作者武村 政春
販売元講談社
JANコード9784062579025
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 遺伝子・分子生物学

購入者の感想

ウイルスは,かつては「濾過性病原体」と呼ばれたように,細胞よりはるかに小さい遺伝子のカプセルで,結晶にさえなる非生物とみなされてきた.しかし最近小さな単細胞生物よりもサイズも大きく,遺伝子数も多い巨大なウイルスが次々と発見されるに至り,生物とウイルスの区別はきわめてあいまいになってきた.ウイルスは自前のリボソームを持たないため,遺伝子情報を翻訳してタンパク質を合成することができない.したがって細胞に感染して宿主のリボソームを利用するしか道はないので,独立した生命体とはみなされてこなかった.だがそれだけの理由でウイルスを非生物とみなすのは早計で,むしろそのような繁殖方法を選択した寄生生物と考える方が合理的なのかもしれない.
生物という概念を細胞もしくはその組織的集合体として定義する立場では,界(kingdom)の上位にある分類単位としてドメインという呼称が使われる(「ドメイン」という術語は数学や物理学でも古くから用いられていて,どうも紛らわしい).現在の定説では,生物は細菌(バクテリア),古細菌(アーキア),真核生物という3つのドメインに分類される.そこに新たに第4のドメインとして巨大ウイルスを登場させようというのが,本書の主題である.巨大ウイルスも進化の原初においては,リボソームに頼らずに何らかの原始的な手段でタンパク質を合成していたと考える.しかし,細胞生物が繁栄してくるとそれに乗っかったほうが効率的であることがわかり,自活することをやめてしまったのであろう.独立して生命活動ができないからといって非生物とは断言できない.(これはたとえてみれば,生活保護費が支給されることがわかると自活のための努力をやめて,いかにして働かず豊かな暮らしができるかに知恵をしぼるようになる生活保護受給者と似ている.しかし,自活する能力をなくしたからといって彼らが人間でなくなったわけではない.)
地球上の生物は,ウイルスを含めてすべて同じ遺伝子暗号を持つ.したがってそれらがすべて共通の祖先(DNAレプリコンというらしい)から派生したことは間違いない.生命の起源にウイルスがどうかかわったのか,これからの研究成果が楽しみである

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