共和政の樹立 小説フランス革命 12 (集英社文庫) の感想

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参照データ

タイトル共和政の樹立 小説フランス革命 12 (集英社文庫)
発売日2014-11-20
製作者佐藤 賢一
販売元集英社
JANコード9784087452471
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

購入者の感想

「ここから、この日から世界の新たな歴史が始まる」とゲーテに言わしめたヴァルミーの戦いを数行で書き流す本巻では、そんな感動とは無縁のフランス国内での愚かな政争を延々と描いている。そこでは、一般にフランス革命の革命性の柱の一つと思われているルイ16世改めさせられルイ・カペーの裁判を通じ、保守とも言えないただの権力の守旧に汲汲とするジロンド派、一枚岩になれず叫びたてるジャコバン派、そして、そんな革命真っ只中に日和見を続ける多数派の平原派という構図が示される。

本書の雑誌掲載時期は2010年の後半、単行本化は2012年の後半。今となっては気付きづらいが、本書の構想時期や著者が連載当時に語っていたことを考え合わせると、著者は民主党への政権交代をフランス革命に重ね合わせつつ、次第に民主党政権に失望し、その失望をジロンド派あたりに多く被せた印象を私は強く抱く。
外には迫りくるプロイセン・オーストリア軍、内にはルイ裁判を軸に止むことのない政争。国中を包む危機感と絶望感ともどかしさは、民主党政権当時に私達日本人の多くが味わった苦いもので、その苦さから何を学びどこに進むかを、私達は本書が描くフランス革命の顛末の中から読み解くべきなのだろう。(先走らせてもらえば、ナポレオンを経たフランスがルイの弟による絶対王政を”取り戻した”ことを、現代では「何も忘れず、何も学ばず”と評している。)

そして、本書のラストでルイは自らも開発に携わった断頭台で露と消える。そのラストで、ルイは王政と民主政に想いを馳せる。フランス王朝史を書きすすめる著者だが、ここに堂々たるラストが描かれているわけだ。(正しくは、本巻に登場するエガリテさんの息子さんがフランス最後の王なわけだが)本書のルイは実に魅力的だったが、その魅力の本質は、ラストのそれではなく、市民ルイ・カペーとの呼称に対し、カペーは名字ではない綽名のようなものだと歴史を紐解くあたりにあると思う。

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