曽野綾子大批判 の感想

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タイトル曽野綾子大批判
発売日販売日未定
製作者佐高 信
販売元ケイアンドケイプレス
JANコード9784906674572
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 確かに曽野綾子氏の書くものは思い込みが激しく、一般人の常識から見ると世間知らずでピントがはずれていると思います。曽野氏のどんな分野の発言に対しての批判なのかと読んでみました。(山崎氏は未知の著者でどんな人なのかと楽しみに。) 
 内容は曽野氏というより「曽野綾子的なもの」に対しての御二人の批判の文章といえます。どうも二人とも自分の意見・主張を、それを受け入れてくれる相手に開陳することにより満足をしているようで、なんだかお互いを自分の考えをさらす為の手段としているような感を受けます。歯切れのいいようで、あまり内容のあるものとはいえません。(特に山崎氏の饒舌なのには驚きました。最近の評論家の常として、どこかで自分の知識を自慢しているような雰囲気を感じて仕方がないのは自分の偏見でしょうか?)
 それにしても佐高氏が、「発言が下品でもよい」し、書く物は「時評の方がいいじゃないですか。消えて行く方がかっこいいじゃない。猪瀬直樹は昔対談した時、猪瀬は自分の作品は残るけどお前の作品は消えて行くみたいな偉そうなことを言っていたんです。お前のが残っても生ゴミみたいなものじゃねえかと思いましたが。」(P110)と言うのには開き直っているとしか思えません。その猪瀬氏との対談本は読んだことが有りますが、猪瀬氏が佐高氏の書く物を「プロパガンダだけのパンフレットのようなもの」と言っていたのはその通りだと思いますし、少なくとも猪瀬氏の書く物のいくつかはノンフイクションとして読まれていくと思います。
 それでも確かにいくつか読ませる箇所があります。「瀬戸内晴美の成功の秘訣は女性の評伝を書いたこと」(P48) 姜尚中氏に関する記述(P98~)などは面白い観点からの批評であると認めます。ただ、丸山真男氏や大江健三郎氏・吉本隆明氏・江藤淳氏に関する記述は、あまりにも思い込みが強くそれこそ陰口のような誹謗か、褒めるにしても高みからの見降ろしたような文章になんとなくいかがわしさを感じ、不愉快でさえあります。論争というより難くせをつけているような、それこそ下品な文章に今回も少々うんざりさせられました。

左と右の論客二人の対談本で、劣化した保守論壇の象徴としての曽野綾子氏とその亜種が俎上に載せられる。付録に江藤淳・佐高対談と山崎論考。

話題は多岐にわたるが、最も具体的で詳しいのが、渡嘉敷島の集団自決を扱ったノンフィクション「ある神話の背景」である。曽野氏はここで自決命令を出したと言われる赤松隊長擁護の論陣を張り、一部の人には「現地調査に基づく決定版」と高く評価された。しかし、山崎氏が示す実態は驚くべきものだ。なにしろ、主張の根拠は捏造文書、論理は杜撰、公の席での発言は嘘、さらには誤読もという有様である。この本を根拠に大江氏と岩波書店を相手取って名誉毀損の裁判を起こした人がいたことを思えば、昨今世間を騒がせている捏造事件なぞかわいいものである。

曽野氏は山崎氏の批判をこれまで黙殺しているようだ。しかし、理を尽くした批判にはきちんと応ずるのが言論人の誠実さというものだろう。ことに、曽野氏は中学校の道徳副読本に登場し、生徒諸君は氏から誠実さを学ぶことになっている。範を垂れることを望む。

曽野綾子的なものが跋扈するようになった原因は、著者らによれば論壇が批判力を失って劣化したことである。しかし、曽野氏の場合、現に本書の佐高、山崎両氏という手強い論敵がいるのに何故という疑問がわく。そこには、曽野氏の巧みな、論争をかわす交渉術、論壇遊泳術、人心掌握術があったということだろう。これにまつわるエピソードと対談者の見方は興味深い。

佐高氏によると曽野氏批判はタブーになっているとのこと。しかし、論壇にそのようなものはあってはならず、論争の場に裁判を持ち込むなぞ言語道断。言論による真剣勝負こそが論壇の劣化を防ぐ道だと熱っぽく語る二人のスリリングな対談である。

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