文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸) の感想

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タイトル文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)
発売日販売日未定
製作者筒井 康隆
販売元岩波書店
JANコード9784006020019
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

本書が単行本で出版された直後以来、ほぼ30年ぶりの再読。当時話題になった文学批評の講義
よりも、今となっては大学や大学教授に対する風刺のほうが面白く感じる。文学批評の講義は、
イーグルトンの『文学とは何か』を読めば事足りるが、以下に引用するような大学の風刺、特
に事務(局)長の説明は的を射ていると驚く人も多いのではないだろうか。よくもここまでご
存知で、と感心してしまった。それが次の一節。

事務長というのは大学では蔭の学部長と言われている存在であり、教授会に提出する資料をほ
とんど自分で作り、学内の重要な会議にはたいてい出席する。裏の権力機構を持っているから
発言力があり、叙勲の申請などをやってもらわねばならぬ関係上、学長以下学内も誰もがこの
事務長にだけは頭があがらない。特にこの成田はなが年教務主任をやり、一方ではちょいとば
かり研究もしてきたため、裏権力を利用してちゃっかりと教授にまでなってしまっていた。事
務長が教授になる例は他大学でも多い。(60~61頁)

事務長は、事務局長、教務課長等の別の名称で呼ばれているかもしれないが、みな同じように
権力を振り回し、学長をはじめ学部長、教授たちに対して威張ったり怒鳴ったりしている。そ
の理由が本書の再読により氷解した。この30年、大学が変わっていないことを痛感。本書の風
刺が古くなるには、まだ時間がかかるかもしれない。

補足。なお、本書は当時の大学教授・文芸批評家への風刺にもなっている。蛇足かもしれないが
若い読者のために書いておく。
・慎本教授(40頁) → 栗本慎一郎、・股辺直己(122頁) → 渡辺直己
・東部教授(136頁)→ 西部邁 ・このほかに浅田彰、柄谷行人が風刺の対象になっている。

何回読んでもおもしろい。マスコミや大学の世界を舞台に筒井康隆得意のドタバタ劇が繰り広げられる。涙がでるほど笑ってしまう。私はこのてのドタバタ劇が大好きである。唯野教授の講義とドタバタ劇が交互に繰り返されるが、講義もわかりやすくてよい。どうしても講義部分が苦手な人は読み飛ばしてもそれなりに楽しめます。

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