ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトルギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者ソポクレス
販売元筑摩書房
JANコード9784480020123
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ギリシャ・ラテン文学

購入者の感想

本書はソポクレスの戯曲のうち、完全な形で残る七篇から編まれています。アイスキュロス、エウリピデスの作品集と併せて、ギリシア悲劇の精粋を文庫本で読むことのできる、当文庫の意義は小さくありません。
悲劇においては、極まった感情が慨嘆として表出するところにその神髄があると言えますが、ソポクレスとアイスキュロスとでは、その表出のかたちに異なる印象を受けます。些か強引な比喩をもってするならば、演劇的なアイスキュロスに対して、映画的なソポクレスとでも言えるでしょうか。アイスキュロスにおける慨嘆の表出は瞬間的で、感情は一句一句に籠められて奔出します。舞台上の俳優が身振りも豊かに、声も高めて、感情を迸らせるさまを彷彿とさせられます。それに対してソポクレスにおいては、台詞の連なり、応酬のなかから、感情が重層的なものとして充溢してきます。ショットの連なりが、ひとつのシーンに収斂していくさまを思わされます。いずれが優れているということではなく、いずれもが悲劇として傑出しており、観客の心の深奥において同様の感慨に至るまでの、効果の変遷において相違があるということに過ぎません。
プラトンは「四元徳」として、知恵、勇気、節制、正義を提唱しました。プラトンはソポクレスより70年ほど後の人になりますが、ソポクレスの生きたペロポネソス戦争下にあっても、これらの四元徳は詩人の胸にあったでしょうか。人間が神々の掟に叛くことは許されず、全ては過酷な因果性に支配される世にあって、それでも、あるいは、それだからこそ徳に従って生きるということもあったでしょう。古の時代でも無論、徳などを顧みず生きた人間たちが大勢だったでしょうが、善を語る口調がどこか自嘲や冷笑を帯びる今の世から見ると、人間は精神において、ダーウィンの論とは異なる座標軸において、退廃、淪落を運命づけられているのだろうか、そのような捨て鉢な思いが頭をよぎります。

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筑摩書房から発売されたソポクレスのギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)(JAN:9784480020123)の感想と評価
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