朱子学と陽明学 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル朱子学と陽明学 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者小島 毅
販売元筑摩書房
JANコード9784480095695
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 東洋思想 » 東洋哲学入門

購入者の感想

朱子学も陽明学も、中国だけでなく日本を含む東アジア諸国に大きな影響を与えた。特に、明治維新のきっかけとなった尊王攘夷運動は、朱子学・陽明学の流れを汲む水戸学、特に会沢正志斎の思想や著書に大きな影響を受けたとされる。孔子を創始者とする儒教については、論語やその解説書を読むなりして、ある程度は理解の方法がある。ところが、朱子学・陽明学となると、手ごろな本がとたんに少なくなる。また、「理」や「気」など、朱子学・陽明学のキーワードが、明治以降、日本独特の文脈で一般的に使用され、かえって朱子学・陽明学の理解が困難であるように感じられる。本書は、朱子学・陽明学の内容を、思想文化史的に解説したものである。つまり、哲学的な解説ではなく、「なぜ彼らはそう考えたのか」を解明することを目的としている。本書は、放送大学の教材を元にしているので、構成や説明が明快である。また著者は、朱子学・陽明学を研究対象として「突き放して」記述していて(文庫版まえがき)、思い入れがないので読み易いのが特徴といえる。

教科書的には、朱子学は「性即理」、陽明学は「心即理」とされるが、この違いを説明できる人は稀だろう。本書は、なぜ朱子学が性即理を、また陽明学が心即理を唱えるに至ったかを順を追って説明している。本書によれば、性即理は、孟子の「人は善なる性を持つ」を「天の理」に関連付けた説である。この考え方は、時代の経過とともに、予定調和的な人間関係の網の目を構築していこうという段階にまで達し、それに息苦しさを感じた人々が、心即理として、より直截に人の感情に即した考え方が陽明学である。つまり、朱子学の精緻な体系性に反旗を翻したのが陽明学という訳である。

 本書は放送大学教材として04年に発行されたものですが、現在は既に絶版となっており、入手が困難な状況です。放送大学教材には優れたものが多数あるのですが、このように割合に短期間に絶版になってしまうのが残念でなりません。

 本書の構成は放送大学の講義用として15講に分けていわゆる宋明学の沿革、その教説、その後の経緯、現代への繋がりと本書執筆時の最新の知見も交えて要領よく纏められた教科書で、小島氏の面目躍如といったところです。また99年に書かれた『宋学の形成と展開』を執筆されたときとやや著者のスタンスが変化してきているような点も興味深く読ませていただきました。

 本書を読んでいるとこのような古典的な分野の研究も決して結論らしい結論が出ているわけではなく、まだ「生もの」なのだなと実感します。またそのように感じさせるように書いた小島氏の学識・筆力にも敬服しました。

 小島氏のお書きになるものはその学識には感心するものの、ややもすると大変読みにくい傾向があるのが残念なのですが、本書は放送大学教材という厳しい制約の中で執筆されたことが却って幸いして大変読みやすいものになっています(失礼な言い方をご容赦!)。

 2013年の現在小島氏は宋明学を今どのように考えていらっしゃるのか、最新の知見も交えて増補改訂版が出版されるとこんなに嬉しいことはないのですが…。先生!また放送大学の講師をやってください。

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