日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で の感想

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参照データ

タイトル日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
発売日販売日未定
製作者水村 美苗
販売元筑摩書房
JANコード9784480814968
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 文学理論

購入者の感想

本書のテーマは、「英語が<普遍語>として圧倒的な力を持ってきている状況下で、日本語が<国語>として生き残れるか」である。「英語が重要」であるか「言語の多様性を守れ」であるかの単純な意見の表明が多い中、さすがは、12歳の時に父親の仕事の都合でアメリカにわたり、しかも、中学生の間は毎日日本文学全集を読むことだけが楽しみであった、という著者、現象と問題点を的確に捉えて、意見の違いを越えた論陣を張っている。著者の思いのたけが溢れ出ている文章は迫力があり、一気に読んでしまった。

著者は言語を<普遍語><国語><現地語>という三階層でとらえている。<国語>は<現地語>が国民国家の成立期に国家との相互作用で標準化して作られたものである。しかし、一旦<国語>ができると、各<国語>に対応した文化・文学が成立する。それは、<現地語>では成立し得なかったものである。我々が無意識に使っている<日本語>は<国語>と<現地語>の二つの面を持っており、<普遍語>としての英語の台頭(言語学的には何の必然性がないが、英米の力と、そして、インターネットの普及期に頭一つリードしていた偶然による)の時代に<国語>としての側面が大いなる危機に直面していると警告し憂えている。

このインターネット時代では、知的レベルの高い人々は<普遍語>を読むことができるのが当然になってくる。そうすると、マーケットの圧倒的に広い<普遍語>で彼らが表現するようになるのは、これまた当然になってくる。その結果、<国語>での表現はどんどん貧弱になり、文学を支えられなくなる。そして、やがては近代日本文学ですら、その価値を理解する人が少なくなり忘れ去られる。これが、著者の言う、「日本語が亡びるとき」なのだ。もちろん、<現地語>としての日本語は残るだろう。しかし、文化・文学を失った言語なぞにどれだけの価値があろうか。近代日本文学を心の底から愛する著者には、その亡びが耐えられない。危機感を持たない日本人が情けない。その気持ちが、冷徹な分析と論理に裏打ちされて書き綴られている。

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