京数寄屋 和のかたち―上野工務店施工作例集 (別冊緑青) の感想

数奇屋建築のお家や茶室の佇まいの姿を豪華なムックで紹介している本です。上野工務店施工作例集という副題がついているように、全て京都市右京区にある上野工務店による建築物です。

本書で掲載されている素敵な数奇屋建築の日本家屋に住むことも適いませんが、眺めているだけで日本の侘びや寂びに通ずる美意識を得られるように感じました。凛とした美しさが漂ってきますし、自然との融合や季節感の取り入れ方など伝統的に日本人が得てきた感覚を住まいに生かしてきたのが数奇屋建築なのでしょう。

建築を志す方や住居デザインのサンプルにもなるでしょうし、茶道に関心のある方にも興味深いムックになっていると思います。

庶民にとっては羨ましく感じますが、匠の技の冴えもまた写真から伝わってきます。桂離宮の書院の美しさや茶室の素晴らしさの伝統が、これら現代の建築の中に脈々として受け継がれているのも理解できました。

自然との共生という考え方で数奇屋建築が施されているのですね。通風と採光の工夫によって、単純なフォルムの中に簡素な美が生まれます。縦と横のデザインの織り成す幾何学模様は、モンドリアンの絵画のようでもありました。
目の保養という言葉がありますが、このような建物に住まう施主に羨望の眼差しを向けながら、日本の美の真髄に少し触れたように感じました。