イスラーム金融―贈与と交換、その共存のシステムを解く の感想
参照データ
タイトル | イスラーム金融―贈与と交換、その共存のシステムを解く |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 櫻井 秀子 |
販売元 | 新評論 |
JANコード | 9784794807809 |
カテゴリ | ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » その他の国々 |
購入者の感想
ようやく出た…というのが正直な感想です。ここ1年ばかり、多くのイスラーム金融に関する入門書や解説書が出版されていますが、いずれも、われわれが持ち合わせている金融についての概念や知識を用いてイスラーム金融の機能や仕組みを説明するものであって、その意味では、技術論的な視角に限定されたイスラーム金融論であったといえます。その多くは「われわれの持ち合わせているメガネでもってイスラーム金融を見たらこうなります。ねっ、カンタンでしょ?」といった立ち位置での解説であって、そこでは、われわれのメガネそのものが曇っている可能性について、まったく無自覚であったといえます。
本書は、過去の類書とは一線を画し、イスラーム金融の全体像とその<可能性の中心>に迫ろうとする試みです。本書が狙いとするところは「イスラーム金融の基本構造をグローバル化に則した側面と、資本主義に抗する側面の双方から考察することにある」と明確です。近代的な「個」を前提とする(市場)交換と、共同体を基礎とする贈与の関係とが、バランスをとり共存するシステムとしてイスラーム金融をとらえること。交換機能のもつ合理性を保持しつつ、なおかつ今日の資本主義システムに見られる無限定な価値の自己増殖、その暴走を許さない仕組みがイスラーム金融にはあらかじめビルトインされている、そう櫻井は指摘します。
イスラーム金融とは、たんなる「仕組み」や「機能」に還元できるものではなく、その全体性において、宗教的倫理性あるいは人々の社会的な関係性と不可分である点において、きわだった特徴をもつシステムであるということができます。まさに存在論的視角が必要とされるゆえんです。
未曾有の原油高と巨大マネーに沸騰する中東経済の活況という時流に安易に便乗するのではなく、イスラーム金融が内包している<可能性の中心>を見極め、あるいはその衝撃のもつ真のマグニチュードの大きさを測るためにも、本書のような存在論的な視角からの語りが不可欠だといえます。僕らは、ようやくその端緒となり得る労作を手にすることができたといえるのではないでしょうか。
本書は、過去の類書とは一線を画し、イスラーム金融の全体像とその<可能性の中心>に迫ろうとする試みです。本書が狙いとするところは「イスラーム金融の基本構造をグローバル化に則した側面と、資本主義に抗する側面の双方から考察することにある」と明確です。近代的な「個」を前提とする(市場)交換と、共同体を基礎とする贈与の関係とが、バランスをとり共存するシステムとしてイスラーム金融をとらえること。交換機能のもつ合理性を保持しつつ、なおかつ今日の資本主義システムに見られる無限定な価値の自己増殖、その暴走を許さない仕組みがイスラーム金融にはあらかじめビルトインされている、そう櫻井は指摘します。
イスラーム金融とは、たんなる「仕組み」や「機能」に還元できるものではなく、その全体性において、宗教的倫理性あるいは人々の社会的な関係性と不可分である点において、きわだった特徴をもつシステムであるということができます。まさに存在論的視角が必要とされるゆえんです。
未曾有の原油高と巨大マネーに沸騰する中東経済の活況という時流に安易に便乗するのではなく、イスラーム金融が内包している<可能性の中心>を見極め、あるいはその衝撃のもつ真のマグニチュードの大きさを測るためにも、本書のような存在論的な視角からの語りが不可欠だといえます。僕らは、ようやくその端緒となり得る労作を手にすることができたといえるのではないでしょうか。