ローマ散歩〈1〉 の感想

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参照データ

タイトルローマ散歩〈1〉
発売日販売日未定
製作者スタンダール
販売元新評論
JANコード9784794803245
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日記・書簡 » フランス文学

購入者の感想

ゲーテの『イタリア紀行』の後半部がローマの風物詩から食事事情や恋愛物語にまで広がる総合文化思想誌的な意味合いを持っているのに対して、スタンダールの著書はローマに旅行し、その歴史や文化を学ぶ人達のために書き下ろされた、言ってみれば当時の知識人への実用的なガイド・ブックだ。しかしながらそれほど読み易い代物ではないことも断わっておかなければならない。何故なら読者の対象となった人々は当時のローマへ観光にやってきた上流階級の令嬢令息や当地に赴任してきた役人達で、彼らは殆んど例外なくローマの社交界への紹介状を携えていた。つまり彼らは相応の教養を持った客人であり、この地に関する予備知識も少なからず持っていたからだ。

また引き合いに出されるエピソードが彼特有の含蓄に富んでいて、多くの場合注釈の併読を必要とすること、写真や図版等、視覚に訴える補助的なマテリアルも少ないだけでなく、彼が執筆した時点からデータの更新がされていない部分も散見されるので、こうしたところも読む側で判断していかなければならない。しかしそれにも拘らずこの『ローマ散歩』は現代の読者にも多くの示唆を与えるに違いない。それはモンテスキューやゲーテが書いた作品と同様に、古代のモニュメントやカトリック教会のデータを列記しただけの案内書ではなく、スタンダール個人の哲学が強烈に反映された文化批評誌だからだ。勿論そこには彼のローマへの一方ならぬ愛着が滲み出ていることは言うまでもない。

スタンダールの言葉はラディカルだがその洞察は鋭く、時にはベルニーニも容赦なくこき下ろすが、サンタ・マリア・ヴィットーリア教会の『聖女テレサの法悦』には惜しみない賛辞を与えている。この第1巻はヴァチカン美術館のラファエッロの間までで、システィーナ礼拝堂のミケランジェロのフレスコ画に関しては第2巻の方に含まれている。訳注は巻末にまとめたものと、各章ごとに付けられたスタンダール自身の原注があり、読み進めていく時に多少煩わしい。尚巻末には付録として歴代ローマ皇帝、ローマ教皇及びこの作品で言及している著名芸術家の一覧表と、簡易なイタリア絵画史年表が掲載されている。

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