根付讃歌―根付ハンドブック の感想

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江戸の根付師を知ろうと、何冊かの本を開いた。天明元年(1781)に版行された「装剣奇賞」という本の巻７には、根付と根付師５４名が網羅されていることを知った。都や県の図書館のタイトル検索にHitなし。国会図書館にはあったがデジタル処理中で、22年8月中は閲覧できないという。大学ではＳ大とＭ大にあった。早速、実物を閲覧し、図のコピーを依頼した。コピーが手元に届いた頃、本書『根付賛歌』を地元の図書館で手に取った。ところが、この本の後ろ４０ページは「装剣奇賞」の巻７をコピーしたものだった。抄訳も付いている。自分にとって、奇なる本とはこの『根付賛歌』である。先達はあらまほしきことなりと吉田兼好は云っているが、初めにこの本に出会っていれば、と思うとトホホな気分。
だが、この本の内容はとても味わい深い。著者の広汎にわたる優れた素養が、根付写真に添えられた小文の中に充溢している。ユーモアと枯淡が同居する楽しい読み物になっている。本を手にする喜びを久々に感じさせてくれた。