ニュートリノでわかる宇宙・素粒子の謎 (集英社新書) の感想

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参照データ

タイトルニュートリノでわかる宇宙・素粒子の謎 (集英社新書)
発売日2013-09-13
製作者鈴木 厚人
販売元集英社
JANコード9784087207071
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 物理学 » 量子物理学

購入者の感想

戦後の有名な公害病であるイタイイタイ病を引き起こした神岡鉱山の跡地に,日本が世界に誇るニュートリノ観測装置が建設された.すなわち,カミオカンデ,それをぐっと大きくした後継のスーパーカミオカンデ,また一味趣向を変えたカムランドである.著者は,ノーベル賞受賞者の小柴昌俊氏,その後を継いだ故戸塚洋二氏に続いて,この3つの観測装置にかかわってきた実験物理学者で,日本のニュートリノ研究の第一人者といえる.本書はその実験がどのようにして行われたのかを,苦労話も交えて,非専門家にもわかるように解説したものである.

神岡でのニュートリノ実験は,非常にラッキーだった.カミオカンデの最初の目的であった陽子の自然崩壊は見つからなかったので,太陽ニュートリノ欠損問題の決着のために,天空からくるニュートリノをとらえる準備を行った.そしてその完了のたった1か月後,全く予期しなかった大マゼラン雲での超新星爆発によって発生したニュートリノをとらえることに成功したのである.17万年前の現象がたった1か月半早く起こっていたら全くアウトだったわけだ.またニュートリノ振動をとらえる実験でも,第3の候補地として選ばれた神岡の地が,たまたま今から10年前に稼働していた多くの原発の原子炉からの距離がちょうどうまい距離にあった.1000年の1回といわれる東日本大震災がもう10年早く起こっていて,福島原発事故のため原発が全面停止していたら,この実験はできなかったことになる.

著者は今後行われるであろうニュートリノ関連の実験についても期待を述べている.実験は理論と違って金がかかる.予算獲得のためには,理論の予言の肯定的な結果が得られるような話に重点が行きがちになる.しかし,理論を否定することも同じく実験物理学者の重要な責務なのである.

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