暴走する資本主義 の感想
参照データ
タイトル | 暴走する資本主義 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ロバート ライシュ |
販売元 | 東洋経済新報社 |
JANコード | 9784492443514 |
カテゴリ | ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学 |
購入者の感想
米国について解剖してますが、もちろん、訳者も語っているように、
これは、グローバル資本主義のことを意味しているので、程度の差こそ
あれ、ニューエコノミーに追随した日本の社会経済制度も、もちろん
本書で明らかにされる矛盾は当てはまるでしょう。
ただし、本書の枠組みである「民主主義や政治的意思決定をも侵食する
超資本主義」というフレークワークから言えば、日本の民主主義は
そもそも、文字通り、欧米型の民主主義ではないので、その辺は
勘案して再検証する必要はあるのでしょう。
しかし、大枠では、ライシュが用いている分析ツールはよく当てはまると
思われます。曰く、「黄金時代」のようなものは、おそらくは、そのまま
日本の高度経済成長期の企業や雇用、従業員、消費者たる我々(や両親の世代)
に当てはまる、今から見れば牧歌的工業化社会制度であるわけで、
その後段を引き継ぐ、何もかもが「創造的破壊」が巻き起こる、(企業に
とっては)果てしない競争と革新のプレッシャ、個人や家計にとっては、
失業や収入激減の恐怖におびえる暮らし、という、臨まない「激動の時代」を
迎えてしまったわけで、これは、まさしく今日の日本政治経済社会の姿です。
この課題を克服するための提言や企業とCSRで描かれている、主に
偽善的企業の社会貢献や、ワシントンや中国でも繰り広げられるロビー活動は
米国的にも読みとれますが、しかし、どの国でも同じような課題とも言えます。
つまり、超資本主義は世界資本主義でもあり、少なくとも、自由民主国家では
この怪物、暴走する資本主義によって、国民と経済と政治は、かなりねじれて
引き裂かれている。そういう意味では、ライシュの分析ツールと、彼のジャーナリズム
は、結構、強力です。前著『勝者の代償』とともに、グローバル資本主義暴走を
見事に描いた名著と言っていいのではないでしょうか。
なお、勝間氏のあとがきは不要。本文を読み終えて、ページをめくった
これは、グローバル資本主義のことを意味しているので、程度の差こそ
あれ、ニューエコノミーに追随した日本の社会経済制度も、もちろん
本書で明らかにされる矛盾は当てはまるでしょう。
ただし、本書の枠組みである「民主主義や政治的意思決定をも侵食する
超資本主義」というフレークワークから言えば、日本の民主主義は
そもそも、文字通り、欧米型の民主主義ではないので、その辺は
勘案して再検証する必要はあるのでしょう。
しかし、大枠では、ライシュが用いている分析ツールはよく当てはまると
思われます。曰く、「黄金時代」のようなものは、おそらくは、そのまま
日本の高度経済成長期の企業や雇用、従業員、消費者たる我々(や両親の世代)
に当てはまる、今から見れば牧歌的工業化社会制度であるわけで、
その後段を引き継ぐ、何もかもが「創造的破壊」が巻き起こる、(企業に
とっては)果てしない競争と革新のプレッシャ、個人や家計にとっては、
失業や収入激減の恐怖におびえる暮らし、という、臨まない「激動の時代」を
迎えてしまったわけで、これは、まさしく今日の日本政治経済社会の姿です。
この課題を克服するための提言や企業とCSRで描かれている、主に
偽善的企業の社会貢献や、ワシントンや中国でも繰り広げられるロビー活動は
米国的にも読みとれますが、しかし、どの国でも同じような課題とも言えます。
つまり、超資本主義は世界資本主義でもあり、少なくとも、自由民主国家では
この怪物、暴走する資本主義によって、国民と経済と政治は、かなりねじれて
引き裂かれている。そういう意味では、ライシュの分析ツールと、彼のジャーナリズム
は、結構、強力です。前著『勝者の代償』とともに、グローバル資本主義暴走を
見事に描いた名著と言っていいのではないでしょうか。
なお、勝間氏のあとがきは不要。本文を読み終えて、ページをめくった
今日、日本を含む先進国では、貧困問題・格差問題等の社会問題が尖鋭化しているが、なぜこのような状況に陥ったのかを示した本である。すなわち、1970年代以前の古き良き「民主的資本主義」に基づく大企業や政府による、寛容で真摯な社会が、いわゆる「グローバリズム」による競争圧力が企業に加わり続けることによって、より安価な製品・サービスを望む「消費者」とより企業の利益の拡大を望む「資本家」が圧倒的な力を持ち、企業で働き企業にとってはコストである「労働者」と社会を構成しより良い地域の環境を望む「市民」への配慮や寛容さが急速に失われたことで、貪欲で情け容赦のない社会が必然的な流れとして現れているのである。これを筆者は、民主主義とは相いれない「超資本主義(=Supercapitalism)」と呼んでいる。
論理的かつ本質をつき明確にその答えを示した深い考察である。その通りだとも思う。問題を矮小化し、政府の規制緩和、あるいは企業のグローバリズムに問題を押し付けた本は多々あるが、根本原因を民主主義の崩壊と捉えた本書は秀逸である。さらに言えば、本書が執筆された2007年当時は、グローバリズムも一般的な言葉でなく、リーマンショック以前に書かれたことを思うと、本当に素晴らしいと思う。
加えて、翻訳もストレスなしに読むことができ、訳者の力量も感じられる。おしむらくは、書名が「暴走する資本主義」とはちょっと違うと思われる点、超資本主義の処方箋について書かれた第6章についてあまり共感しない点と、すばらしい訳者のあとがきがある前に、なぜか勝間和代の不必要な推薦コメント文がある点である。これら点を割引いても、十二分に広く読まれるべき本と言える。0
論理的かつ本質をつき明確にその答えを示した深い考察である。その通りだとも思う。問題を矮小化し、政府の規制緩和、あるいは企業のグローバリズムに問題を押し付けた本は多々あるが、根本原因を民主主義の崩壊と捉えた本書は秀逸である。さらに言えば、本書が執筆された2007年当時は、グローバリズムも一般的な言葉でなく、リーマンショック以前に書かれたことを思うと、本当に素晴らしいと思う。
加えて、翻訳もストレスなしに読むことができ、訳者の力量も感じられる。おしむらくは、書名が「暴走する資本主義」とはちょっと違うと思われる点、超資本主義の処方箋について書かれた第6章についてあまり共感しない点と、すばらしい訳者のあとがきがある前に、なぜか勝間和代の不必要な推薦コメント文がある点である。これら点を割引いても、十二分に広く読まれるべき本と言える。0