メタモルフォシス の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルメタモルフォシス
発売日販売日未定
製作者羽田 圭介
販売元新潮社
JANコード9784103361114
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » は行の著者

購入者の感想

「黄金は、人間が食べるものではない。しかし、自らを人間以外のものに変えてしまえば、それも可能だ。」(60ページ、「メタモルフォシス」より)

『どんな髭剃りにも哲学がある』とのサマセット・モームの言葉の通り、なにごとも突き詰めてしまえばそれがどれだけ瑣末な日常動作であっても一つの観念に到達してしまう。ここに納められた二本の中短篇も「被虐趣味(マゾヒズム)」を題材に、ちょっとした哲学の域にまで発展している。

「メタモルフォシス」の主人公・サトウは証券会社に勤めている高給取りの身分だが、その一方で既にこの業界を見限り、転職さえ視野に入れている。だがマゾヒズムに身を落している時だけは経済的なこと、具体的な将来の遥か向うにある「その先」が見られるのではないかと信じている。

作中にお散歩シーンがある。更には「犬達」のじゃれあいなんてシーンもある。どれも心は……温まらず、ぶっちゃけ引く描写の連続だ。我々は作中の不幸な目撃者達と同様、彼らの痴態を目撃する。しかし幸運なことだろう、彼らがそれらの行為に意味づけを行う所まで垣間見ることが出来るのだ。

単に「マゾプレイの連続だぜ、うわ~」と引きながら楽しんでもいいし、各々が行為に込めた思いをメタファーのように味わってもいい。前述の「黄金」を食べようとするシーンだが、黄金を食べようとするのはそれこそムシだけ、翻って黄金に価値を見出すのは人間だけだ。つまり……あとは観察者の判断次第だろう。それら変態行為の極北でしか見えてこない視点が、心理が、そっと首をもたげる様を、及び腰で見守ろうじゃないか。

ニッチな題材で出来上がっている本作だが、芥川賞候補になったのも頷ける。だが受賞しない辺り、もっと頷ける所である。スポットライトを浴びるにはいささか刺激が強すぎる題材である。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

メタモルフォシス

アマゾンで購入する
新潮社から発売された羽田 圭介のメタモルフォシス(JAN:9784103361114)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.