潤一 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル潤一 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者井上 荒野
販売元新潮社
JANコード9784101302515
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

 年齢も立場もばらばらな9人の女性が、潤一を語るという設定の、連作短編集です。なんとなく、先に川上弘美の『ニシノユキヒコの恋と冒険』を読んでいたので、また同じようなものかなと思っていました。が、よかったんです、これが。潤一は本当にいいかげんにみえる。潤一は女が好き、セックスも好き。読んでてじれったくなるのは、一人一人の女性は、それぞれに潤一を語るのだけど、読み手はそれを一並びにみているからでしょうね。でも、私が一番気に入ったのは、最後の「潤一」の章。“俺は、何でも長続きしたためしがない。”と自己を語る彼は、案外真面目。漂うように生きている潤一でも、“あの角まで 行けるか。その先まで行けるか。”と突き動かされていくところに、若さとか純粋さを感じてしまいます。井上荒野は初めて読んだけど、うまい!と思いました。

私も「ニシニユキヒコの恋と冒険」に似ている…と思いました。
けれど、最後に『潤一』自身の章を持ってきたところがこの物語の巧いところだと感じました。結末を読者に委ねない、というか。そういう描き方が嫌いな人もいらっしゃるでしょうが…
一見すると「女にだらしない男」とそういう男に「まんまと引っかかってしまう女たち」の話なんですが、そうした男と女両方を憎めなくなってしまうような力がこの小説にはあります。潤一と女たちの間にはそれぞれ「避けがたく引かれ合ってしまった感」があり、それが何だか哀しい…
「あの角まで行けるか」「その先まで行けるか」そんなことを言いながら、潤一はどこまで行くんだろう…そんなことを考えると、やっぱり哀しい。

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