レギュラシオン理論―経済学の再生 (講談社現代新書) の感想
参照データ
タイトル | レギュラシオン理論―経済学の再生 (講談社現代新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 山田 鋭夫 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784061491465 |
カテゴリ | ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学 » 現代経済学 |
購入者の感想
当書は、フランス・レギュラシオン学派のミシェル・アグリエッタ(M.Aglietta)やロベール・ボワイエ(R.Boyer)などの著作の訳出に尽力された山田鋭夫氏(名古屋大学)が、必ずしも経済学を専門としない読者を想定して書き下ろした新書版によるレギュラシオン(調整)理論の入門書である。刊行は1993年であるけれども、日本における最も平易で簡潔な解説書と確言できよう。
同書では、あまり聞き慣れないこの理論の大要が手際よく整理されており、「レギュラシオン・アプローチ」(著者)に関する格好の手引書となっている。そして、私が特に瞠目するのは前述したアグリエッタやボワイエの「出自」である。彼らはいずれも「官庁エコノミスト」の出身であり、アグリエッタは国立経済統計研究所などに、ボワイエは建設省や大蔵省などに勤務していたことだ。
このあたりの事情と経緯については、本書「2.レギュラシオン理論の誕生と理論家たち」に述べられているが、彼らは1970年代のフランスにおける経済計画等に関わる中で、既存のモデルや用具が有効性を喪失し、ケインズ主義的手法等が奏功しなくなった現実を思い知らされる。そうした問題意識(現場感覚)が、やがてレギュラシオン理論として開花することとなったのである。
私は、この学派を細かくフォローしておらず、今も存続しているのか否か生憎と判らない。しかし、私が当該理論に惹かれるのは、上述のように純粋なアカデミズムの世界から生まれ出たものではないという点にある。さらに、「レギュラシオン学派は…マルクスとのつながりを引き受けなければならない」(ボワイエ『現代「経済学」批判宣言』)というスタンスにも大いに共感を覚える。