世紀末芸術 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル世紀末芸術 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者高階 秀爾
販売元筑摩書房
JANコード9784480091581
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » アート・エンターテイメント » アート・芸術

購入者の感想

「序章 世紀末芸術とは何か」
「第二章 世紀末芸術の背景」
「第三章 世紀末芸術の特質」
「第四章 世紀末芸術の美学」
「結び 二十世紀への道」

 各章の内容を簡単にご紹介します。

 「序章」で、世紀末芸術とは最後の印象派グループ展が開催された1886年から、フォーヴィスムが最初に登場する1905年までの約20年間の西欧芸術全般であり、この本の目的はその世紀末芸術の分析と意味付けをすることとしている。
 「第二章」で当時の時代背景に関しての解説。その例として1900年の万博で技術が芸術の中で重要な役割を果たすことが示されたこと、写真が絵画に対して持っていた危険性について、美術ジャーナリズムによる美術批評そのものが芸術であり、精神性や形式において中世への憧れが強くその影響を強く受けていたこと、などが説明されている。
 「第三章」では、世紀末芸術が目指したものは単なる写実ではなく、自己の精神世界へ向かうための「装飾性の復活」であり、ゴーガンにより1888年に「自然から抽象を引き出さなければならない」という発言がなされ、「芸術とはひとつの抽象に他ならない」という理解に達したこと、さらにドニによって1890年に述べられた、「絵画作品とは、ある一定の秩序のもとに集められた色彩によって覆われた平坦な面である」という重要な定義について説明している。
 この第三章がメイン。
 「第四章」で象徴主義、綜合主義、科学主義について概説されている。このうちの象徴主義の部分ではルドンが取り上げられている。また、科学主義はスーラを代表する新印象主義であり、光学、色彩理論、実験心理学を作品制作に取り入れていたためにこの名があるようである。
 「結び」は略。

 1963年初出でこの内容は凄いと思うが、多様で混沌とした世紀末芸術の全ての分野を、時代背景までも網羅して説明しようとするあまり、本質的な部分がプラスアルファ的な部分に希釈されてしまった印象を受ける。
 できればもっと図版を多くし、「結び」の内容をもう少し具体的に、例えばフォーヴィスムから表現主義ぐらいまでの部分を短くても付け加えていただければ、私としては完璧な一冊でした。

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