論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書) の感想

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参照データ

タイトル論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)
発売日2014-09-17
製作者杉 晴夫
販売元光文社
JANコード9784334038175
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 参考図書・白書 » 科学技術

購入者の感想

このタイトルを見たら、当然誰でも、「理研におけるSTAP細胞問題」を思い浮かべるでしょう。しかしながら、この本でその部分を直接扱っているのは、第1章と最後の第7章くらいです。後は、著者が専門としている「生命科学」に関する著者自身の自慢話と日本の文科省、特に旧科技庁部分に対する憤懣の記述です。したがって、STAP細胞問題にしか興味のない読者は1章と7章を読めば十分でしょう。そこで著者はSTAP細胞問題に関する生命科学者としての見解として、いくつか問題点を指摘しています。まずは、今回の問題の責任をすべて小保方氏に押し付けて、他の連名者や、理研の上層部は一切責任を取ろうとしていない態度は戦前のような対応であるとして小保方氏以外の関係者を強く批判しています。次に、日本の科学技術政策が旧科学技術庁出身グループによりねじまげられ、「古典的な生命科学研究」を育む土壌が失われ、「競争的研究」と言う研究者、特に若手の研究者に負担を強いるシステムとなったことが、この事件の起こった原因となっているということです。さらに、その競争的研究システムの導入により、科技庁に選ばれた研究課題には極めて多額の研究費が配分され、使いきれないことがあるのに、国の予算システムが単年度主義になっているため、年度内に予算を使い切る必要に迫られ、無駄なだけでなく、時には違法な使用までされるようになり、予算をかけた割には実質的な成果が出ないけれど、それでも成果を年度内に出すことを求められるため、そのギャップを埋めるべく「捏造」に手を出す研究者が出てくると言うことです。また研究成果の評価として、ネイチャーなどのインパクトファクターの高い雑誌への投稿が競われるようになっていますが、その雑誌が商業主義的で、学術性を損なっているだけでなく、雑誌の権威を保っているはずの審査制度にも問題があり、正しい評価がされているかどうか疑問な点が見られ、そのことが今回の問題を起こした原因のひとつであるともしています。他にもいくつかの指摘をしていますが、それぞれ、もっともなものも少なくありませんが、必ずしもそうばかりともいえないものもあり、意見の分かれるものも散見されます。しかし、本書は、同じようにSTAP細胞問題を取り扱った

「筆者の見解では、この事態に研究者を追い込んだ科学行政、研究費交付システムによるものである」「わが国の自然科学を滅亡の淵においこみつつある、文部科学省の恣意的なトップダウンの研究行政の原因は、2003年、遠山敦子大臣の時代に決定された『国立大学の独立行政法人化』にある」。

「はじめに」の部分においていきなりSTAP細胞事件の話が中心に書かれているし、このタイトルなので、STAP細胞の論文捏造とそのマクロ的な背景について詳しく調べて迫っている本かと思って手に取った。

本書で著者は、STAP細胞の論文捏造事件は、国立大学の独立法人化と研究費の減額及びそれとセットになっている競争的研究資金の増額が原因だと舌鋒鋭く繰り返し主張している。確かに、国立大学の独立法人化にはいろいろ問題はあろうし、競争的研究資金が特定の分野に集中的に投下されていることに対する疑問の中はもっともなものもあるように思われる。

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光文社から発売された杉 晴夫の論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)(JAN:9784334038175)の感想と評価
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