生命と機械をつなぐ知 基礎情報学入門 の感想
参照データ
タイトル | 生命と機械をつなぐ知 基礎情報学入門 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 西垣 通 |
販売元 | 高陵社書店 |
JANコード | 9784771109957 |
カテゴリ | ジャンル別 » コンピュータ・IT » コンピュータサイエンス » 情報学・情報科学 |
購入者の感想
高校生向けだとすると、日本の高校生の情報学のレベルは非常に高い、むしろ高過ぎるくらいである。逆にこれが理解できる高校生は、この本を読む必要が無いであろう。評者は、西欧で教育を受け、理学、工学、経営情報学の学士号を持っているが、結論から言うと、この本はそれでも決して易しいとは言えない。第1章 情報、第2章 システム 第3章 メディア, 第4章 コミュニケーションとプロパゲーション、と200ページほどの本であるが、第2章システムの最後の方で階層的自律コミュニケーション・システム(Hierarchical Autonomous Communications System, HACS)が出てきてから、思弁的と言うのか哲学的と言うのか抽象的というのか、内容が急に理解しにくくなっている。全体にHACS以外は非常に分り易く、特に、ロボット、マスメディア、ネットいじめ、出会い系サイト、オタク、デジタルデバイド、IT リテラシー、人間=機械複合系など、今の世界で生じている問題や将来私達が直面するであろう問題など、さすが情報の専門家、これからの時代を見事に先取りしている。このHACSは著者が提示しこの本の売りらしいのだが、HACSは情報の基礎を学ぼうという高校生には全く不向きであると考える。HACS以外は実に分り易く明快で、情報に関し広く全般的に扱っており、これ以上の入門書は私は知らない。「社会や人間と情報の関係=情報社会でいかに生きてゆくか」その教養や知識を身につける優れた本であることは間違いない。「情報とは何か?コミュニケーションとは何か?」や「情報技術の有効性と限界はどこに?どのように?」などに対し、自ら考える力も育成されるだろう。著者にはご不満かも知れないが、この本で情報とはどんなものか全体像がつかめるので、情報学の初心者にHACSを抜いてでも一度読むことをお薦めする。