Brothers in Arms (Miles Vorkosigan Adventures) の感想

　邦訳は『親愛なるクローン』（創元ＳＦ文庫） 　セタガンダ軍に追われ、デンダリ傭兵隊は地球に逃げ込むが、そこには、新たな事件が待っていた。
　マイルズ・ヴォルコシガン中尉と彼の偽装（あるいはもう一つのペルソナ）である傭兵隊のネイスミス提督が同時にロンドンに居ることで起る混乱。バラヤー帝国の仇敵セタガンダがネイスミス提督に賞金を懸けて追求を続けている上に、デンダリ隊は破産の危機。さらに、マイルズのクローンまで登場して、ストーリーは例によって急ピッチで展開。
　背後にあるテーマは、「父と子」。物語の軸には、Butcher of Komarrとあだ名される、コマール侵略の司令官であった父を持つマイルズと、かつてのコマールにおける反バラヤー抵抗組織の指導者を父とする在地球バラヤー大使館駐在武官ガレン大佐。この二人の親子関係に加えて、マイルズと彼に敵対するクローンの存在。クローンは、親子／兄弟関係の変種としてストーリーに絡む。
　そこで気になるのがタイトルのin arms。これは何を意味するのか。母親の腕に抱かれる乳飲み子のように兄弟関係が幼いというのか？　あるいは、兄弟が武器を手にして対峙しているというのか？　さらには、arm in arm という表現も連想される。それらが、全て重なり合って、重層的に響き合っているようだ。