緑の家(上) (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル緑の家(上) (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者M.バルガス=リョサ
販売元岩波書店
JANコード9784003279618
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » スペイン文学

購入者の感想

「小説とは、本質的に方法論を模索する芸術である」(三島由紀夫)
 バルガス=リョサの代表作「緑の家」は三島のいう言葉がもっとも当て嵌まる芸術作品である。本作は五つの物語で構成され、予測できない展開になっているが、見事にそれらは繋がりを持ち、恰もジャングルに迷い込んでしまった読者は、いつしか物語の素晴らしさと言葉の美しさの虜になる。前衛的手法を取り入れた物語の詳細は、読者の手により体験してもらうことが、何よりも大切である。時間軸や空間軸をひょいっと超え、魅力ある登場人物の活き活きとした姿に全身が引き込まれる。
 プルースト、ジョイス以後のいわゆる小説の危機とは無縁の「文学の可能性」が詰まったラテンアメリカ文学は、身体の中に入り込む不思議な存在である。「緑の家」は、ラテンアメリカ文学の豊饒〜土の匂い、風のうた、人の温もり〜を随所に官能でき、至福の読書体験ができると確信している。

 余談であるが、版元を変え親しみやすい文庫として復刊したことに、一読者としての喜びを感じている。
価値ある作品が時代を超え、人類の普遍的財産として受け継がれることは、翻訳者の熱意・労力(下巻末の翻訳者あとがきは必見の文章である)と出版社の真摯な態度(今後も新しい古典・読み継がれるべき書物を探索していただきたい)に敬意を表したい。
 更に望むのは、リョサのひとつの極であり、ラテンアメリカ文学の超大作であり、20世紀を代表する小説であり、読者を圧倒するスケールの「世界終末戦争」を岩波文庫で復刊していただきたい。南米に悠久な山河がある。それはアンデスという山であり、アマゾンという河である。奇しくもAmazonの源流がリョサのふるさとペルーにあることに不思議な縁を感じつつ、リョサの作品群が多くの人に触れられるよう願っている。

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