ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質 の感想

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参照データ

タイトルブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
発売日販売日未定
製作者ナシーム・ニコラス・タレブ
販売元ダイヤモンド社
JANコード9784478008881
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学

購入者の感想

 上巻では語られることのなかった、正規分布に基づく統計シミュレーションでは想定できないブラック・スワンへの対処法が語られる下巻。トレーディングの実務家としての著者の戦略は、ガチガチに安全な資産に85-90%を投資し、残りは投機的な賭けに投じるという「バーベル戦略」を取るという。トレーダーとしては1987年・1998年・2008年の3回(=すなわち市場が突如暴落してブラック・スワンが現れた年)しか儲けていないという著者の自慢(?)は控え目な言い方ではあるだろうけど、実際、過去50年のSP500のリターンの半分は値動きの激しい10日間で生じているという。ただ、安全資産(=著者は米国債を挙げている)の選定というのが今は難しい時代なので、その辺の具体的説明について(こんだけのページ数を読まされてるのに)紙数が割かれておらず、投資理論の方は食い足りないものがあった。

 寧ろ面白かったのは、不確実性下の世界での生き方の方で、宝くじやギャンブルのようなペイオフの確定した賭けをやりまくるのではなく、ペイオフが拡張可能な事業(=大当たりした場合の利得が無限大に設定できる映画や出版、ベンチャーキャピタル、科学的研究、が例として挙げられている)に手を出しまくれというメッセージは馬鹿馬鹿しいくらい個人でやるにはハードルが高いが、結局「当てる」とはそういうことなのだろう。そして、その際は都市に住んで人に会いまくるというアナログな方法を推奨している点も面白い。著者はこういう言い方はしていないが、損失の少ない「創造的なこと」をやりまくって、当たる確率は低いが大当たりするとデカイ山をとにかく張りまくれというのは、中々含蓄に富むメッセージだと思う。(著者の挙げているバイオ研究や映画、ベンチャーキャピタルは、実際のところ元手が凄くかかるんだが。)また、悪い方のブラック・スワンに備える場合は、どんなに低い確率でも影響の大きさで優先順位を考えろと言っている。大地震が例に挙がっている点なんて、今の日本で読むとぞっとする話だ。

  上巻から読んでいると、自画自賛、他者批判ばかりで、さらに文章も、途切れ途切れで、素人に対しては説明も不十分。とてものめり込めるような代物ではない。読書を楽しむという点からすると、あまりお勧め出来ない本だ。しかし、この本で指摘されていることは、非常に本質的で、極めて重要である。著者は金融の世界の人で、金融業界に本質的欠陥があることは、リーマンショック以降の金融危機で誰の目にも明らかになった。しかし、著者も指摘しているように、永らく慣れ親しんだ間違った理論から離れるのは実際には難しいようだ。さらに悪いことに、情報システムが蔓延している今、同様な数学のテクニックは、金融以外の様々な分野にも波及しようとしている。もちろん、著者が批判しているベルカーブを使ったテクニックが適用可能な分野も多いし、そうした場面に使われるのは良い。しかし、これらの数学は、ソフトウェア内に内包され、その本質的な限界性も理解しない人たちが、不適切なデータに対して、コンピュータでマウスとクリックして適用し、不適切な結果を出してしまおうとしている。つまり、今、世界は、著者の批判している悪い方の黒い白鳥によりさらされようとしているのだ。
  より読みやすく、人々を夢中にさせてくれる類書が出ると良いのだが、とにかく読みにくいから、やや著者の態度に腹が立つからと途中で辞めず、手に取ったからには最後まで読み終わって欲しい。0

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