凍える街 (創元推理文庫) の感想

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事件の発生から解決まで、12月19日から12月28日までの10日間の状況を描いたストーリです。刻々と進む捜査の状況が1日を一章として展開される構成は、非常に緊迫感があります。
オスロ市内のマンションの一室で、４人が犠牲となった殺人事件が発生。
４人のうち、３人は企業経営で財をなした一族の人間。もう一人は、この一族との関係をうかがい知ることのできない出版コンサルタント。幕開けが衝撃的なこと、また、被害者の人間関係の複雑なことから、一気にストーリに引き込まれます。
この事件に関して、捜査本部の組織としての捜査方針と、主人公のハンネ刑事の推理は相容れない状況となります。このパタンは、腕利き刑事を主人公とした捜査ものでは、よくあるといえば、よくあるのですが、主人公のハンネは決してスタンドプレイに走るわけではありません。捜査機関の上層部と軋轢を生じながらも、捜査組織にギリギリに順じ、捜査全体を真実に導いていきます。
この展開は非常に説得力があり、迫力があったと思います。
事件の端緒である「四重殺人」はそうめったにあることではありませんが、その後の展開にリアルさを持たせることで、ストーリーの展開が巧みに収められていったように思います。
主人公ハンネの公私それぞれでの、人間関係についての苦悩ぶりも、さらなる味わいを添えていたと思います。
ラストは衝撃的でした。。。が、2015年の東京創元社の出版予定ラインアップでは、このハンネシリーズの邦訳新作がリリースされるようですから、本作のあともハンネは健在なはず、ですね。
主人公のハンネや、周囲の登場人物も魅力的に描かれており、ストーリーの展開を堪能しつつ、この作品自体に親しみを覚えたところで、新作のリリースを目にできたことは大変嬉しいことだと思います。