アラブ政治の今を読む の感想

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タイトルアラブ政治の今を読む
発売日販売日未定
製作者池内 恵
販売元中央公論新社
JANコード9784120034916
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

アラブというと、どのようなイメージを持つだろうか。
「イスラム過激派」「反米」「危険」「西洋の毒が及んでいない地域」・・・等々思い浮かぶかもしれない。
だが、そうしたアラブ像のほとんどは「作られたもの」である。本書は、丹念にアラブの実像を明かしていく。

アラブに対する第一の見方は「イスラム過激派、危ない」というものだろう。
だが、イスラム教徒においても過激派はごく少数である。これはあまりに不当な一般化である。

第二に、逆に「アラブ=独自」を強調し、サイード的『オリエンタリズム』の反転でなんでも無条件に受け入れるようにする言説がある。
これはアラブ研究者に強いとされる。
だが、それはアラブの過度の理想化であり実態に見合っていない。

また、アラブというと反米一色だという先入観も強い。
だが、例えばあのイラクでは、フセイン政権を倒したこと自体は極めて評価が高い(ただし、アメリカの行動は「自国利益のため」と見られている)
国民のガス抜きとしての政府主導の反米政策はよくあるが、それと実態を混同してはならない。
それに大半の国は実はアメリカ依存しているのである。

イラクへの自衛隊派兵についても国内では散々もめたが、筆者は「軍が行くか否かが問題なのではなく、何をしに行くかだ」と喝破する。
イラク国民の望むものが何かをよく見極めて適切な援助をすることが望まれているのであり、周辺や国内事情、一部の過激行為によって方針をころころ変えていてはかえって信用を失うのだ。

アラブのことは思ったよりも知らないものだ。
時事評論集だが今読んでも十分面白い本であった

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