入門 医療政策 - 誰が決めるか、何を目指すのか (中公新書) の感想
参照データ
タイトル | 入門 医療政策 - 誰が決めるか、何を目指すのか (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 真野 俊樹 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121021779 |
カテゴリ | ジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » 医学 |
購入者の感想
各プレイヤーの動きを客観的に分析している点が参考になる。医療政策には一つ手法に頼るべきというような正解は世界的に見てもないと思われるゆえ、非常に難しい分野であり、思考方法を生み出すきっかけとしての良書だと思う。
社会保障の中でも、医療分野はステークホルダーが非常に多く、医療政策は誰がどう決めているのかよく分からない。本書は、日本の医療政策の課題を5つ提示(国民皆保険の維持、医療の価格決定、規制緩和、医師数の問題、医療費の財源)した上で、医療政策決定に関する様々な視点を掘り下げている。通常は様々な専門家がそれぞれの視点を論じるところを、本書では著者が統一的に説明しているので分かり易い。
本書では、医療政策を考える視点として、医療制度史、医療経済学、公共哲学・倫理学・経営学などを概観している。これだけでも医療政策というのが一筋縄ではいかないことがよく分かる。また、各国の医療制度と比較した上での日本の特徴をまとめ、日本の医療政策の決定メカニズムに関わるプレーヤーたち(各専門団体、各省庁、中医協など)のスタンスを概観している。さらに、医療政策の決定における対立構造(医療者対保険者など)をほぼ網羅し、分析している。
最後に著者は、「公衆衛生モデル−治療モデル」対「医療費増加の容認対医療費増加の否認」というマトリックスで医療政策のあり方をモデル化し、医療におけるイノベーションを提言している。参考文献も豊富で、医療政策の個別分野をさらに勉強する際に便利である。
今後の医療政策の研究に関して評者の期待を述べれば、ステークホルダーが複雑に入り乱れる中での医療政策決定プロセスの可視化、および地域医療の視点の導入である。前者については、政権交代でもぶれないような、医療の目標レベルと財源に関する国民のコンセンサス形成が不可欠と思われる。後者については、日本においても医療の地域格差が目立つ一方、医療費を抑制しつつ地域の医療レベルを向上させた成功事例も見られることから、それらの事例に学ぶ価値があると考えられる。
本書では、医療政策を考える視点として、医療制度史、医療経済学、公共哲学・倫理学・経営学などを概観している。これだけでも医療政策というのが一筋縄ではいかないことがよく分かる。また、各国の医療制度と比較した上での日本の特徴をまとめ、日本の医療政策の決定メカニズムに関わるプレーヤーたち(各専門団体、各省庁、中医協など)のスタンスを概観している。さらに、医療政策の決定における対立構造(医療者対保険者など)をほぼ網羅し、分析している。
最後に著者は、「公衆衛生モデル−治療モデル」対「医療費増加の容認対医療費増加の否認」というマトリックスで医療政策のあり方をモデル化し、医療におけるイノベーションを提言している。参考文献も豊富で、医療政策の個別分野をさらに勉強する際に便利である。
今後の医療政策の研究に関して評者の期待を述べれば、ステークホルダーが複雑に入り乱れる中での医療政策決定プロセスの可視化、および地域医療の視点の導入である。前者については、政権交代でもぶれないような、医療の目標レベルと財源に関する国民のコンセンサス形成が不可欠と思われる。後者については、日本においても医療の地域格差が目立つ一方、医療費を抑制しつつ地域の医療レベルを向上させた成功事例も見られることから、それらの事例に学ぶ価値があると考えられる。