アインシュタインの逆オメガ 脳の進化から教育を考える の感想

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参照データ

タイトルアインシュタインの逆オメガ 脳の進化から教育を考える
発売日販売日未定
製作者小泉 英明
販売元文藝春秋
JANコード9784163901640
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般

購入者の感想

 ヘッケルが唱えた「動物は受精卵から生まれるまでの間に母の胎内で進化の過程をたどる」(個体発生は系統発生を繰り返す)という「反復説」は、日本の三木成夫がさらに深化発展させ、それに吉本隆明等が影響を受けた、という程度の知識を持っていたのだが、現在の先端的な遺伝子解析や脳科学の知見の基で、この反復説がどう位置づけられるかを、本書は丁寧に分かり易く説明してくれる。
 反復説は、その誕生時には反キリスト教的と抹殺され、その後も様々な理由から科学的にも学会の主流派には受け入れられなかったという。が、生物学を超えてフロイト、ユング、ピアジェ等の思想家が関心を寄せ、さらには白人優越主義やナチズムにまで影響を与え(結果的に、反復説をより唱えにくい状況が生じた)、波乱の足跡を辿ったことが記される(詳しくはぜひ実際に本書で)。
 次に著者は、ホメオボックスという遺伝子群や「発生砂時計モデル」という、反復説が補強(補正)されるかもしれない最新の研究成果や、反復説の立場に立てば納得し易い脳科学や進化学の最新の知見を、興味深い写真や図版とともに記していく。そして、斎藤公子氏の優れた保育の実践等を紹介し、反復説が教育(特に早期教育)に生かせる可能性を訴える。そこに、本書の表題が絡むわけである。

 読後の印象としては、なぜ「発生砂時計モデル」のようなことが生ずるのか等、反復説は科学的には十分立証されない部分がかなりあって、未だ発展途上(未確立)の理論と思えた。ただ、著者も強調するように、惹き付けられる魅力が何とも大きい。
 ということで、著者が誘う(いざなう)「反復説」の現在を、垣間見てはいかがだろうか。

ダーウィンの進化論は、一方向に進む時間・自然選択・突然変異で組み立てられている。そして、当時の最新の考え方が取り入れられている。
進化論は、頭で考えれば確かに筋の通った話で様々なことが合理的に説明できる。そして、化石まで含めれば全てが見わたせる。

ただ、自然淘汰で進化した例は一つもないと豪語する専門家もいる。起こるべくして起こったというものである。自然淘汰は、科学ではない。また、メンデルの遺伝の法則は自然淘汰では説明がつかない。ダーウィンには、当時の品種改良の概念が先にありそこには、擬人化した考えが入り込んでいる。そして、進化には、物理的必然性もある。

ヘッケルの反復説というのがある。
ヘッケルは、鋭い観察眼と芸術的才能を併せ持ち頭の中が極めて整理されていた科学者であり現在、再評価されつつある。発生と進化は、密接な関連があるという事である。
ヘッケル説
1.一番最新の進化は、一番最後の段階に付け加えられる。(終端付加)
2.付け加えられた分、時間の短縮がどこかで行われる。(圧縮)
1については、胚分割のごく初期でも起こる。
2については、突然変異により発生にかかる時間が短くなることもあるが、逆に長くなることもあるのがその後分っている。

フロイト、ユング、ピアジェは、この反復説に大きな影響を受けた。
三木成夫は、ニワトリの胚で肺と四肢を得て海から陸へと上陸する過程を示した。そして、人の顔の相貌の変化、魚類から両生類、上陸完了したころ、原始哺乳類のおもかげをスケッチに残した。それは、時間圧縮の例である。
ヘッケルは、キリスト教サイド・英米系学者から謂れのない批判を受けたが、近年のDNA分析の進歩はこの説を無視できなくなっている。

1953年二重らせんの発見以来、1980年代に至り動植物、菌類にも共通部分の多い設計遺伝子が発見された。こことは、それらに共通の祖先がいたことを強く示唆する。

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