水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫) の感想

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タイトル水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者安部 公房
販売元新潮社
JANコード9784101121079
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

常に人間の存在の意義・曖昧さを問い掛ける作者の初期の短編集。作者特有の寓話性の高い作品が多いが、「メタモルフォセス=人間の存在の危うさの象徴」と捉えている印象を受けた。物語は寓話的なのに、登場人物の視線は舐めるように読者に絡み付く点は常の如く。

タイトル作「デンドロカカリヤ」は人間の植物化をかなり戯画的に扱ったものだし、「手」の主人公は鳩だが、軍用伝書鳩→手品用鳩→剥製→鳩の像→弾丸と変形を繰り返す。そして、変形は"必然"なのだ。「飢えた皮膚」は、飢えた男が有閑女を"皮膚が保護色になる"と脅かす話だが、最後の一頁で作品の解釈を転回させる秀作。二重の意味で変形を扱っている。「詩人の生涯」では、詩人の老母(39歳!)はジャケットに変形するが、極寒の中、息子の身体を包む。そして、詩集が完成すると又しても二重の変形。そして、もう一つのタイトル作「水中都市」では、音信不通だった主人公の父が魚に変形し、街自身も水に覆われるという異形の世界が、ありふれた物語のように淡々と描かれる。

そんな中、「闖入者」は、主人公のアパートの部屋が突然見知らぬ大家族に乗っ取られるという不条理的冒頭から、民主主義の多数決と無関心が"個"を押し潰す様を戯画的に描いた、作者の作風を代表する秀作。「鉄砲屋」は無垢な島民を、自由主義が席巻する様を皮肉タップリに描いたもの。

「変形」をキーワードに、高度な小説技法で人間の存在の意義を問い掛けた傑作短編集。

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新潮社から発売された安部 公房の水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)(JAN:9784101121079)の感想と評価
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