中国はなぜ「反日」になったか (文春新書) の感想
参照データ
タイトル | 中国はなぜ「反日」になったか (文春新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 清水 美和 |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784166603190 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
文春から出ていて、しかもこのタイトル。これだけみるといかにもウヨクっぽい主張が前面に展開された本だと思われてしまうかもしれない。でもこれは、日中関係をめぐる基本的な事実認識に立ち返ることで、半ばパターン化したウヨク的論調を打破しようとした、内容のしっかりした本である。
この本は、基本的に中国で反日感情が高まりを見せてきたのは90年代、江沢民が実権を握る過程で展開した愛国主義キャンペーンが主な原因だ、という立場をとっている。ここまでは特に目新しい主張でもでもない。しかし、この本が凡百の中国バッシング本と違うのはそこからだ。清水さんは、上記のような中国政府の「変質」を、さまざまな政府要人の公式発言やメディアの記事、およびその背景にある複雑な国内の権力関係や国際状況の変化を読み込みながら丁寧に「検証」していく。そして、そのことによって逆説的に今後の日中対話の可能性を探ろうとしているのだ。
例えば、最近では日本から要人が訪中すると「戦跡」に連れて行かれて「反省」することを要求される、というイメージがある。しかし国交が正常化した直後には、政府は民間人が南京虐殺の現場を訪問することさえ拒否していた時代があった。その後も、トウ小平を始めとした中国首脳の日本への態度は決して「歴史問題」一色ではなく、冷戦の終結をはさむ微妙な国際情勢の変化をうけて絶えず「ゆれ」続けてきたのだ。清水さんは、こうした経緯を踏まえたうえで、政府の愛国主義キャンペーンによる反日感情の高まりは最近における極端な傾向で、今後も続いていく可能性は少ないだろう、という見通しを示している。こういった中国の国内・国際状況双方に目配りのきいた記述によって、本書は中国政治の入門書としても大変優れたものになっている。
この本は、基本的に中国で反日感情が高まりを見せてきたのは90年代、江沢民が実権を握る過程で展開した愛国主義キャンペーンが主な原因だ、という立場をとっている。ここまでは特に目新しい主張でもでもない。しかし、この本が凡百の中国バッシング本と違うのはそこからだ。清水さんは、上記のような中国政府の「変質」を、さまざまな政府要人の公式発言やメディアの記事、およびその背景にある複雑な国内の権力関係や国際状況の変化を読み込みながら丁寧に「検証」していく。そして、そのことによって逆説的に今後の日中対話の可能性を探ろうとしているのだ。
例えば、最近では日本から要人が訪中すると「戦跡」に連れて行かれて「反省」することを要求される、というイメージがある。しかし国交が正常化した直後には、政府は民間人が南京虐殺の現場を訪問することさえ拒否していた時代があった。その後も、トウ小平を始めとした中国首脳の日本への態度は決して「歴史問題」一色ではなく、冷戦の終結をはさむ微妙な国際情勢の変化をうけて絶えず「ゆれ」続けてきたのだ。清水さんは、こうした経緯を踏まえたうえで、政府の愛国主義キャンペーンによる反日感情の高まりは最近における極端な傾向で、今後も続いていく可能性は少ないだろう、という見通しを示している。こういった中国の国内・国際状況双方に目配りのきいた記述によって、本書は中国政治の入門書としても大変優れたものになっている。