おまえじゃなきゃだめなんだ (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルおまえじゃなきゃだめなんだ (文春文庫)
発売日2015-01-05
製作者角田 光代
販売元文藝春秋
JANコード9784167902759
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

各々の殆どが幾つかの掌編で構成される「約束のジュエリー」、「あの宿へ」、「さいごに咲く花」、「最後のキス」、「幼い恋」、表題作、「それぞれのウィーン」、「すれ違う人」、「不完全なわたしたち」及び「消えない光」の9つの作品から構成される短篇集。裏表紙に「恋愛短編集」と銘打ってあり、確かに男女の機微を扱ったものが多いが、作者としては広く人生や記憶について語っているのではないかと感じた。

「(愛という)形のないものを如何に形として残すか」、「例え今(過去)は不遇でも、一生を通して見れば人は各々それなりに生きている」といった事を各編で軽く主張している様である。形として残す方法の1つが「記憶」であり、「記憶」は現在の状況に応じて、固定・削除・改変できる。作者の善意は良く出ていると思うが、「八日目の蝉」、「紙の月」といった濃密な作品を読了済みの読者には読み応えの点で物足りない(掌編の中にはショート・ショートの様なものもある)と思う。

全編がショート・ショートとまでは言わないにしても、各編の構成はかなり雑(能天気)であり、登場人物の設定や物語の顛末が極めて図式的で、作者が本作のために努力を傾注したとは到底思えない出来。作者に対する初心者向けの短篇集であろうか。

すぐれた文章には出来事や情景が目に浮かぶよう描写されている、
角田作品は、まさにそうで物語を進める手法は見事である。
表題作はじめ「すれ違う人」「消えない光」は予想できない展開で、じ
んわりと心に残る作品である。

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