いま生きる「資本論」 の感想

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参照データ

タイトルいま生きる「資本論」
発売日販売日未定
製作者佐藤 優
販売元新潮社
JANコード9784104752072
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

最初に単行本で読んだ時には、自分の知識不足であまり理解できませんでした。その後、同じ著者の「いま生きる階級論」(新潮文庫)や「勉強法」(角川新書)を熟読してから(文庫本として出版された)本書に再度チャレンジしてみました!
今回は佐藤先生の熱い講義が行間からはっきりと聞こえてきました。「G-W-G’(G+g) 貨幣-商品-貨幣」=私たち労働者は、労働力を資本家に売って対価としての賃金を得るが、資本家は産み出された剰余価値を内部留保や投資に回すため、労働者は最低限の生活を辛うじて保障されている、との図式が良く理解できました。
近年、世界的な新自由主義政策のために、本来は①労働力の再生産に必要な家庭生活を維持するための賃金や②技術革新に追いつくための教育費に充てる賃金までもが減らされているとのこと。資本主義のシステムが自壊することは当面ないが、社会の格差がますます開くとのこと。
著者は、この本を読んだ読者が周囲の人たちと金銭を離れた関係を構築することで「資本主義のブラック化に歯止めをかけることができる」と熱く訴えています。佐藤先生の弱者への温かさが伝わってきます!
 

この本で資本論そのものを理解できるとは期待してはいけない。あくまでも資本論入門の入門、または、読むきっかけになるかもしれない本である。大学在学中、「マル経」の教師が何を言っているのかが全く理解できなかった。マルクス経済学が革命の理論でないことは分かったが、授業ではなぜそうした誤解が生まれたのかといった話も現実社会との繋がりを感じさせる話もなかった。社会人になって初めて、マルクスが言っていたことを実感、理解できた。物理学や数学といった学問では10代でも若き天才がいる可能性がある。しかし、経済や経済学を理解することは、世の中の仕組みや人間の感情への深い理解と共にあるため、経済学での若き天才が10代ということはない。私の学生時代にこのような本があれば、信奉するしないは別として、もっと興味を持ってマルクス経済学を勉強していただろう。マル経の教師がこのような本を読んで、10代の人間にも分かるように教えてくれていればと心底残念、いや、恨みにも似た感情で強く思う。

 講義形式で『資本論』の現代的意義を説いた好著です。最初の講義では日本における『資本論』受容の歴史を述べることから始めて、講座派と労農派の対立・論争にまで触れています。第2講義では、労働力商品について分析し、これが資本家と労働者の等価交換ではなく、労働者の不払い労働から剰余価値が生まれ、資本家による労働者の搾取が生じることが説明されている。マルクスは労働価値説を採り、等価交換を原則に資本主義社会の構造を論じていきますが、資本家によって購入された労働力商品の使用については資本家の支配に委ねられる。ここに他の商品とは本質的に異なる労働力商品の使用価値があります。使用価値とは買い手の欲望のことであり、欲望の享受によって消滅するものですが、労働力商品のみは資本家の利潤への欲望を満たすために存在し、労働者が生産した剰余価値は資本家の利潤追求のための手段として徹底手的に利用され、ここから労働者の人間疎外が生じる。つまりマルクスが『資本論』を書いた目的は社会主義革命にあるのではなく、資本主義社会の構造、資本家と労働者の生産関係の本質を究明し、それまでの古典派経済学が究明できなかった利潤が生じるしくみを解明することにあったのです。したがって、『資本論』の現代的意義を論じるのであれば、剰余価値の分析、剰余価値学説史の論究は不可欠だと思います。現代資本主義経済、グローバル経済において最大の問題点は国際的な価格競争であり、そのために生産費の削減、賃金水準の低下を余儀なくされるからです。マルクスを論じるならこの点こそ触れるべき最大の論点ではなかったかと思います。とはいえ、著者は現代資本主義経済と関連付けて『資本論』の現代的意義を論じている。その手法と語り口は見事です。ビジネス・パーソンにお薦めの一書です。

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新潮社から発売された佐藤 優のいま生きる「資本論」(JAN:9784104752072)の感想と評価
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