帝国主義論 (光文社古典新訳文庫) の感想

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タイトル帝国主義論 (光文社古典新訳文庫)
発売日2013-12-20
製作者レーニン
販売元光文社
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カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治学

購入者の感想

"すなわち、帝国主義は過度期の資本主義である。いや、もっと正確に言うなら、死に至る資本主義である。"1917年発刊の本書は、第一次世界大戦下において実体的な富の生産という経済的本質を失い、必然や不可避的に詐術や独占、寄生化してしまった資本主義、帝国主義に経済学的分析から警鐘を鳴らしていて、現在でも刺激的。

個人的には、歴史上始めて社会主義革命を成功させたと評価される一方で、1991年のソ連崩壊により否定的見方も存在する著者の本を未読であった事、またGAFAなどの独占的なグローバル企業が影響力を増す現在社会をより理解するのにも参考になるかもと思って本書を手にとりました。

さて、革命前に書かれた正式名称が『資本主義の最高の段階としての帝国主義ー一般向け概説書』である本書は、19世紀後半から20世紀前半にかけて自由競争から始まった資本主義が如何にして【金融独占による帝国主義化】へと至るかについて。著者の亡命先であるスイス、チューリッヒの図書館蔵書を活用して、思った以上に難解な理論書というよりは【誰にでもわかりやすく】(起きていた)第一次世界大戦についても【世界の分割及び再分割をめぐる帝国主義間の闘争】であると指摘しているわけですが。100年前に書かれたとはいえ、現在の資本主義の必然的閉塞、及びかってのイギリスやフランスから【米中を中心とした現在の世界覇権争い】を理解する上でも鮮度を失っていないと感じました。

また。本書で指摘している"分散化が意味しているのは、実際のところ、巨大な独占体が集中化を進め、おのれの役割、意義、実力を強化することなのである"と、決済の仲介を主な業務とするはずの銀行が【なぜ変質化、独占化していくか?】についてのくだりは、GAFAに限らず現在のIT企業の多くが【多角化およびブロックチェーンや電子決済といったフィンテック分野に参入している】理由の説明にもなっていて、こちらも歴史は繰り返す的に近未来を考えるのに役立ちました。

今だから、あえて姿を消した社会主義を考えたい誰かに。また著者よろしく"資本主義社会の「自由」は、依然として古代ギリシャの都市国家のものと変わらない。それは、奴隷主のための「自由」なのだ。"と日々憤りを覚えている誰かにもオススメ。

執筆時期は1916年1月から6月とある。今からちょうど100年前には既に資本主義の副作用が始まっていたのか。
資本が集中すると、自由競争から権力抗争へ。まるで弱肉強食の様相を呈する。現代でもその様子は全く変わっていない。
いや、更に悪くなるばかりだ。ピケティの「21世紀の資本」でも詳細に論じられている。
金利生活者が居ること自体はある程度仕方が無いことに思える。が、その人たちを中心に世の中の仕組みが決まっていくのは問題だと思う。
経済のうねりの中で、政治の力はどれほど及ぶのだろうか。そんな気持ちになってくる。

今までに、何人もの翻訳家によってこの「帝国主義論」が和訳されています。私はそのすべてを読んだわけではありません。けれども、どれも文字を追うだけで、内容を吸収することができませんでした。「帝国主義論」は何が書いてあるかわからないとあきらめていたところにこの光文社の「帝国主義論」に出会いました。文法にのみ忠実で、訳文がおろそかになっていた従来のものに比べると、その日本語は洗練され、また、私のような素人にも、すんなり入ってくる日本語でした。他のレビューに文法に関して否定的な内容がありましたが、虫眼鏡で翻訳者のあらを探して悦に入っているようで大変不快でした。わかりやすい日本語訳でかつ、洗練された日本語訳という点で私は大変満足しています。

 私の興味を引いた点。自由競争(産業資本主義)から独占(金融資本主義)へ移行し、巨大銀行が出現するというくだり。巨大銀行がカネによって支配権を確立していくのだが、その端緒の一例として当座預金の決済等の事例を挙げている。実務的・具体的でもあり、おもしろいと思った。取引の反復、拡大に伴い決済機能(当座預金、為替等)が発達し、それにつれて情報が銀行に集まる。量的拡大が質的変化をもたらす。高利貸資本が銀行資本となる。そして、そもそもの信用創造機能(融資、保証等)からして、高利貸資本、銀行資本は情報を重要視する。我流で云えば、情報資本主義である。
 また、ドイツ、ロシアの金融官僚の天下りについても言及してある。(情報の流れの1ルートでもある。)

 約100年前の時代の問題点を現代は色濃く残していると本書は教えてくれる。

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