百年前の日本語――書きことばが揺れた時代 (岩波新書) の感想

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タイトル百年前の日本語――書きことばが揺れた時代 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者今野 真二
販売元岩波書店
JANコード9784004313854
カテゴリ人文・思想 » 言語学 » 日本語・国語学 » 日本語研究

購入者の感想

例えば「基礎」という語がありますよね。
これを現在では「きそ」としか読みません。

ところが明治の頃には、「きそ」以外にも、「いしずえ」あるいは「もとゐ」「どだい」など、
実に様々な読み方があったようなのです。

自由度が高いのは「読み方」だけではありません。
あることばにどんな漢字をあてるかという「書き方」だって、今とは比べ物にならないほどヴァリエーション豊かなのです。
(例えば、手を拭く「ハンケチ」ですが、「手拭」「手巾」「汗巾児」など、実に色々あります)

これら、時に漢字の音訓を無視した、非常に自由度の高い読み書きは次第に否定され、
ひとつの語にはひとつの読み方書き方しかないという現在の形につながってゆくのですが、
筆者はそれを「誤ったことであった」と批判しているわけではありません。
ただ、百年前の日本語は、今とはかなり違ったものであったという事実を冷静な筆で綴り、
現在の我々に、日本語というものについて今一度考えなおすきっかけを与えようとしているだけです。

この問題提起は私には非常に刺激的でした。
思わず本棚から上田敏の「海潮音」を取りだして読みなおしたほどです。

明治の作家の文体については優れた研究が既にあり、そのいくつかを私も読んでいましたが、
文体よりさらに細かい、ひとつひとつの語については、これまで全く意識してきませんでした。
そんな私の盲点を、この著作は、ぐさりとひと突きしてくれたわけで、
久し振りに、胸がわくわくするほどの知的興奮を味わうことができました。
日本の近代文学を愛する者必読の良書だと断言します。0

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