中世を旅する人びと―ヨーロッパ庶民生活点描 (ちくま学芸文庫) の感想

「中世ドイツの旅人」を主題としているのかなと、読み始めは思ったのですが。

「旅する人」　の解説書ではなく
「旅」に関わる「人びと」　がスコープされています。

作者ご自身のドイツ旅行から、過去の旅人の歴史を振り返り
職人に関する法、流儀、習慣を細かく引くことで
「なぜ旅する必要があったか？」を軸として

それらを遇する宿の在り方、受け入れる立場についても
子細に表現されており、ひとつの読み物として完成されています。

知識を得ようとして読むと、けっこうしんどいかも。
文芸書として楽しむことで、知識が得られるタイプでした。

タイトルの通り、中世ヨーロッパの庶民の暮らしについて、
実に詳しく書かれている。現存する当時の資料の少なさもあり、
中世ヨーロッパについて書かれた本の多くは、貴族や中流階級の
人々の生活が中心で、市民や農民、旅人にスポットを当てた本は
数少ない。その意味で、この本は実に貴重な一冊と言える。
新紀元社などから出版されている本と同様、小説やマンガ、
ゲームのシナリオ作りの資料としてももちろん有用だが、
元々は社会史の教本であり、資料的な構成にはなっていない。
しかし、他の社会史の教本と比べると深くは踏み込み過ぎず、
初心者が勉強を始める第一歩として使うのに最適である。
ただし、初版が70年代ということで、多少文体や漢字が難しい。
その点だけは留意した方がよい。