単位が取れる統計ノート (KS単位が取れるシリーズ) の感想

統計学はイメージが湧きにくく少しでも苦手意識を和らげようと本書を購入しましたが、苦手意識は変わりませんでした。
本書は分かりやすい解説ではあるのですが。

　他のレビュアの方も指摘していたが、統計学の初歩時点で、
あまりに丁寧に確率論を展開してしまうと、かえって全体像の
把握を困難にしかねないように思う。
　その点、本書では、確率論をひとまずおいて、「記述統計」
から「統計的推測」へと、大学初年度レベルの講義内容がテン
ポよく展開される。私自身がそうであるが、何度も統計学の『初
歩』に躓きながら、諦めきれずに別ルートでの挑戦を模索する
人が、本書に出遭えたときの反応は「コレコレ、こんなテキス
トが欲しかったんだよ」ではないだろうか。

　高校数学の微積分を習得している人にとっては、適度に数式
展開される入門書のほうが理解が早い。そして、統計学の入門
時点で登場する重要概念のゴツい数式証明が、本書のどこかで
丁寧に展開され、ポイントをおさえた解説が載っていることは、
数学的な証明を丹念にたどりたい学習者にとって、何ものにも
代え難い安心感である。

　個人的には、仮説検定（特に片側検定の考え方）でもう少し
言葉をつくしてもらいたかったが、本書を一読できれば、後は
学習者それぞれが問題集にあたっていき、どんどん経験値を高
めていけるように思う。

　なお、以後の版では修正されているものと思うが、第１刷では
20ページの上段で平均値μの式に、また、182、183ページで母
分散の信頼区間で、分母のχ二乗(0.975)とχ二乗(0.025)の位
置が逆といった誤植があった。
　初版でさえこの僅数なので、初学者が安心して学べるという
コンセプトは、編集面でもきちんと守られている。この面でも
良書であると思う。