トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルトム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)
発売日2012-06-27
製作者マーク トウェイン
販売元新潮社
JANコード9784102106112
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

いたずらっ子のわりに、信心深い10歳のトム・ソーヤーは、「夜、犬が自分に向かって吠えられたら悪魔が迎えにくる」とかいう類の迷信を過剰なまでに信じてたりして、今の子ども達よりもよっぽど幼い。わりに、親友のハックと深夜の墓地に潜りこんだり、自失の念から船を盗んで家出したりと、今の子どもよりもよっぽど素朴で無謀だ。「無謀さ」というのは、もちろん幼稚さによって担保されているのだろうけれど。その幼稚で無謀なトムとハックの冒険の様子が、今のこの現代においても、読者にページをめくらせる魅力に溢れてることに、今更レビューするまでもない本作の、古典的よさがあるのだと、読んでみてあらためて再認識させられる。

家出した子どもたちを村の大人達がみんなで探し回る様子や、その子どもたちが死んだものと勘違いして村人全員で悲嘆に暮れる様子には、都市化した社会が失ったありし日の共同体の姿が描かれている。とはいえ、この古典的名著は、その素朴な共同体のあり方を肯定して、人間関係の希薄になってしまった現代社会に警鐘をならすというような、安易な隘路に陥っていない。古典として淘汰を免れた瑞々しさとでもいうのか、現代人が共感できる新鮮さがちりばめられている。

しいて言えば、トム・ソーヤーの冒険には、素朴さや無垢さに潜む滑稽さが描かれている。その滑稽さが、子どもの頃を思い出しておかしかったり、大人になった今では羨ましくなるのだ。それは、私たちが豊かさを代償に失ったユーモアとでもいうのか。みんなが笑って、みんなが泣く。描かれた世界は、そんな魅力に溢れている。

もはや名著過ぎて「柴田元幸訳だからよかった」ということもないが、柴田訳に悪訳というのは皆無なので、もし今から「トム・ソーヤー冒険」を読むのなら本作が望ましい。

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