安倍官邸の正体 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル安倍官邸の正体 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者田崎 史郎
販売元講談社
JANコード9784062882941
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

小泉政権以降、1年毎に首相が変わっていた時代を経て、第2次安倍内閣がいかにして長期政権を作り上げているかを分析した好著。
反安倍本にありがちな事実に基づかない思い込みもなく、丁寧な取材から事実を記述している。
力の源泉は人事権であるというのは、政治でも企業でも共通しており、組織運営や人心掌握の参考にもなろう。

政治家は権力闘争するものだし、闘争の結果握った権力を使って何をするかが問題なのであって、権力を握るタクティクスがうまいと言っても仕方がないのではないか。そのタクティクスと言えば、正副官房長官会議で意思疎通を図っているとか、健康のためにゴルフを増やしたとかいうレベルの話なのだ。読み物としては良いけれど。

著者は時事通信解説委員。いわゆる政治の内幕ものの本である。米国でもワシントン・ポストのボブ・ウッドワードなどがこのジャンルを得意とするが、この田崎史郎の本もそれに習ったものだろうか。田崎が安倍政権を分析する際に随所にリチャード・ニクソンの著書『指導者とは』を引用していることからもその意欲を感じる。この種の政界内幕ものは派閥政治が華やかなりし頃だった自民党下野前には、大下英治が複眼的視点で取材したものが数多く出ていた。だが、新聞社や通信社の政治記者が書いた中でもっともパイオニアというべき存在は渡辺恒雄の『派閥』だろう。この本の題名をみると「安倍官邸」とある。派閥の時代は終わり官邸の時代になったということを実感せざるを得ない。

この本は、安倍政権の権力構造の秘密を描く内幕もので、2014年衆院選から日を置かずして刊行されている。第2次安倍政権は第一次政権と異なり、数多くのスキャンダルがあっても政権基盤がびくともしない。二度の選挙を経て自公政権を盤石にした後で、直後に首相と極めて距離が近い通信社の解説委員が内幕ものを書いて出す。そして、この本は安倍政権に対して驚くほど好意的である。

この本に書かれていることは、菅官房長官の「人物像」など、他のメディアでも断片的にかかれた内容である。ただ、この本で重要なのは、安倍政権の権力基盤が「正副官房菅長官会議」にあるということを明かしていることだ。これは著者の田崎自身が強く強調していることでもある。安倍晋三、菅義偉、世耕弘成、加藤勝信、杉田和博、そして首相秘書官の今井尚哉による会議で、政治案件のすべてが意思決定されているという。そして、この会議の開催の際は、首相官邸側の「隠し廊下」を通って集まるので、マスコミの「首相動静」には載らない、ということだ。

第二次安倍政権に、いつくかの危機が訪れてもそれをクリアしているのは、田崎の言うとおり、安倍晋三の反省、菅官房長官の危機管理力、そして、上記の会議の定期的な開催において官邸幹部が十分な意思疎通をしているからだ、というのはその通りなのだろう。

さらに、自民党長老グループが相次いで国会議員を引退していることも党内における批判勢力を失わせていることにも注意しなければならない。

 安倍政権における意思決定の仕組みを書いた好著。

 著者は安倍首相とも親しい政治評論家だが、「よくぞここまで」と思うくらい安倍政権の内情を調べて書いている。だから「政治はこうして動いているのか」「あのときはこうだったのか」という話が満載。安倍政権への評価はともかくとして、とにかく面白い。

 冒頭からいきなり、先だっての衆議院解散の内幕が語られる。あのときもう解散を考えていたのか、だから解散に踏み切ったのか、こうして周囲を説得したのか――もう「へえ」「ほう」の連続となる。「大義なき解散」と批判されたが、安倍政権にとってはそれなりの大義があったことも分かる。

 この話に限らず、興味深いエピソードには事欠かない。民主党政権が壊した官僚との関係をどう修復したか、マスコミとのスタンスをどう取るか、閣僚のダブル辞任はどうして決まったか、東京五輪招致成功の陰に何があったか(←これは読みごたえあり)、集団的自衛権に関する閣議決定をなぜ急いだか……などなど。

 その中にあってごく小さなエピソードだが、STAP細胞で一躍時の人となった小保方さんを総合科学技術会議に呼ぼうとして思いとどまったエピソードも興味深い。誰しも「へえ」となること請け合い。

 著者は安倍を「現実主義者」だと定義する。その背景には安倍一次政権での失敗がある。安倍自身失敗の原因を次のように語っている。
「私がやりたいことと、国民がまずこれをやってくれということが、必ずしも一致していなかった。そのことがしっかり見えていなかった。私が一番反省しているのはその点です」

 この反省を踏まえ、世論に耳を傾け、世論が最も求めているものを最優先課題にする。だから「アベノミクス」なのだ。そして、課題の遂行にあたっては、各党の意向や世論を考慮して、押すべきは押し、引くべきは引く。100点満点でなければダメというのではなく、30点でも40点でも、できるところから積み上げていく。それが安倍の政治スタンスだと著者は言う。

現役を退いた、もしくは退きつつあるベテランの政治記者の中で、本書の著者である田崎史郎さんは断トツの取材力を誇る。何よりも取材対象である政治家と強い信頼関係を構築し、いまだに太いパイプを維持していながら取材対象に歯に衣着せぬ鋭い切り込みを入れるところが田崎さんの真骨頂だ。巻末の「おわりに」に田崎さんは「政治記者の最大の仕事は国家権力の構造を解明することだ」と言い切っている。「時の権力者に肉薄して、何を考えているか掴む」ことを通じて権力構造を解明し発信することこそ政治記者の使命であり、「批判の為の批判」や「権力に対する揶揄、からかい」と敢然と距離を置く。その姿勢が本書でも徹底されている。

最初に明らかにされるのが、安倍官邸の権力構造のキモである「安倍官邸の最高意思決定機関」である「政副長官会議」の存在である。首相官邸の五階にある総理大臣執務室でほぼ毎朝開かれるこの会議の出席者は安倍総理の他に菅官房長官、加藤勝信官房副長官(元財務省)、世耕弘成官房副長官、杉田和博官房副長官(元警察庁)、今井尚哉首席秘書官(経済産業省)の6人である。時間はたいてい10分から15分と短く内容も雑談が多いとのことだが、文字通り日本の権力のトップにいる6人が、ほぼ毎日顔を合わせることに意味があるのだという。そして重要なことは今井の他に五人いる総理秘書官、中江元哉(財務省)、柳瀬唯夫(経済産業省)、鈴木浩(外務省)、島田和久(防衛省)、大石吉彦(警察庁)すら、この会議には参加出来ず、首席秘書官たる今井から事後に内容を聞くしかないということだという。ちなみに首相官邸の五階には外から見えない秘密の廊下があって、その廊下を通じて五人が総理大臣執務室に集うので、政副長官会議が何時誰が出席して開催されたかは、外からはうかがい知れない構造になっているのだという。

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