魔術士オーフェンはぐれ旅 キエサルヒマの終端 の感想
参照データ
タイトル | 魔術士オーフェンはぐれ旅 キエサルヒマの終端 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 秋田 禎信 |
販売元 | ティー・オーエンタテインメント |
JANコード | 9784904376690 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » コミック・ラノベ・BL » ライトノベル |
購入者の感想
これはもはやラノベと呼ぶべきなのか?かつてのオ-フェンシリーズの後半から、エンジェルハウリングにかけて、すでに漂っていた、なんともいえない閉塞感、厭世観。それは、すでにせつなさという域を超えていた。その閉塞感と、激しい戦闘シーンの描写、コメディパートの軽妙な語り口の共存こそが、秋田 禎信の持ち味であったのだが、この復活シリーズは、その作風に、さらに人類、人生に対する哲学的なものが加わって、もはやラノベというものではない。魔術士がでてきて異世界を舞台にしているだけで、中身は一種の純文学のようだ。確かに面白い。読み応えもある。僕としては満足だが、これを、今の中高生あたりが読んで面白いのかどうか?オーフェンは、この時点でもまだ20代そこそこだろうが、すでに壮年の男の哀愁と落ち着きと色気をたたえている。物語の中では、大火力で町や人をバンバン意味なくぶっ飛ばしてた無謀編から、数年もたっていないが、その間に経験した、修羅場、挫折、別れ、死、絶望の数々が、一人の男をここまで成長(変化?)させるとは。そして、それは作者の成長でもあるんだろう。思えば、この秋田 禎信という作家は、15年くらい前のラノベ界においては、その圧倒的な筆力が際立っており、スカスカに軽く読める安っぽい印象のライトノベルというジャンルに、ハードボイルド、ミステリ、SF、文学等のジャンルでも通用する要素を持ち込んだ、とにかくラノベ界では別格の作家という感じだった。その後、安井 健太郎、吉田直、桜庭一樹、西尾 維新、冲方 丁など、もはやラノベの域にとどまらない強烈な個性と筆力の作家が数多く出てきて、その中に埋もれていった印象があるが、久々に読んで、やはり元祖の威厳と独自性、そして確かな成長を感じられて嬉しかった。ずっと買っていなかったが、他の近作も欲しくなったよ。