失われた時のカフェで の感想

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参照データ

タイトル失われた時のカフェで
発売日販売日未定
製作者パトリック・モディアノ
販売元作品社
JANコード9784861823268
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » フランス文学

購入者の感想

モディアノはほぼ2年に1作のペースで新作を発表しているので、処女作『エトワール広場』以降、作品数は30点に近い。
その大半を読んできたモディアノ・フリークとしていえば、本書は彼の作品中でも上位にランクされる。
本を閉じたとき、哀切きわまりない印象が残る秀作だ。

若い人妻ルキは家を出て、パリ六区にあるオデオン界隈のカフェに入り浸るようになる。
ある集会で知り合った若者とそのカフェに出入りし、そしてホテルを転々とした挙句、窓から身を投じてしまう。
そんな彼女の<記憶>を4人の話者が語る構成になっている。

最初の語り手は、彼女に思いを寄せる超エリート校の学生。
二番目は、ルキの夫から調査を依頼された探偵。
三番目は、ルキ自身の回想だ。
最後の話者は、ルキとホテル暮らしをした若者ロラン。彼には前作『血統書』に描かれた若き日のモディアノの姿が投影されている。

ここでモディアノ作品の特徴について一言しておけば、どの作品にもモヤに閉ざされているような印象が漂う。
通りの名前や季節、年月はちゃんと記されているのだが、しかし物語の輪郭はなかなか見えてこない。ぼんやりと霞んでいる。
読者は手さぐりしながら一歩ずつ作品世界に入っていかなければならない。
するとやがて、人びとの関係や出来事の背景が浮かび上がってくる。
そのとき読者は、すでにモディアノの<物語世界>に取り込まれている……。

本書でも、夫から逃げ去ったルキの少女時代の姿が浮かび上がってくると、もう途中で読みさすことはできない。
ルキは何におびえているのか。何から逃げようとしているのか。
その答えは謎に包まれたまま、彼女は越境に越境を重ねてパリの街をさまよい歩く……。

さて、訳者は本書の翻訳について、こう記している。
《自分のこれまでの小説の実作者としての経験が生かされる方針を考えた。それは語学的に正確な訳、というよりも、この作品を原文で読んだ時の自分の感動を伝える訳、だ》

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