資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義 の感想

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参照データ

タイトル資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義
発売日販売日未定
製作者デヴィッド・ハーヴェイ
販売元作品社
JANコード9784861823664
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

 本書は日本でも良く知られた地理経済学者の描く、現代版「世界システム」の見取り図である。また、本書はサブプライム・ローン恐慌の直後に執筆されたものであり、その限りにおいて時事的な経済批評の性質も併せ持っている。
 しかしながら、ハーヴェイの筆致の素晴らしさは、そうした時事評論から出発しながらも、これをたやすく経済学の根本問題である「資本とは何か」「流動性とは何か」といった一般性の高い諸問題と接合しながら、説得的に論じている点にあるだろう。

 本書の構成は以下のとおりである。
 まず第一に、サブプライム・ローンと金融恐慌の問題解説から出発し、第二に、すぐさま問題対象を経済学の基礎概念へとって返す、ここでの分析枠組みは、彼が一貫して探求しているマルクス派経済学をベースに置いたものである。そして第三に、目下進行中である金融資本主義の「地理的不均等性」を指摘し、都市と空間、先進諸国と発展途上国との関係についての考察が続けられ、最後にこうした現代資本主義の問題に対する彼の処方箋が主張される。

 とくに第三の金融資本主義の地理学的分析は、現代版I.ウォーラスティンの『世界システム』論であるといってよい。ウォーラスティンはハーヴェイと異なり、歴史学的な立場から近代ヨーロッパによる世界システムの構築を批判的に分析したが、本書はこれよりも、経済学と地理学に軸足を置きながら、ウォーラスティンが達成したものと近似の知見を読者に提供してくれる。

 したがって、本書は時宜的な問題を切り口としながらハーヴェイがこれまで行ってきた仕事を統合したものだとみることもできる。『ポストモダニティの条件』や『パリ―モダニティの首都』などにおいて、彼は歴史学および地理学の視点から、空間造成の不均等性と権力性を問題としてきた。これに対して、最近の『<資本論>入門』や『ネオリベラリズムとは何か』は、より経済学的なテーマを中心としたものであったが、本書はこれらハーヴェイが過去に行ってきた仕事を交差させたものである。
 いずれにせよ本書は、経済学の専門知識がなくとも理解可能な、しかし密度の高い現代資本主義への批判の書として、広く読まれるべき本であるといわなければならない。

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