砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトル砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者桜庭 一樹
販売元角川グループパブリッシング
JANコード9784044281045
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » さ行の著者

購入者の感想

 増田佳江『不規則な部屋』(2009年)を装画に使ったカバーが、情感が有って素晴らしい(カバーデザイン/鈴木成一デザイン室)。富士見ミステリー文庫版は、内容とはちぐはぐな萌え絵が表紙で興醒め。

 海野藻屑は「ボク少女」で、ラノベによく有りがちで、食傷気味ですが、萌え系と違って、この子には血が通っています。藻屑は「自分は人魚」だと嘘を付きますが、私の中学時代にも「私は多重人格者だ」と言っていた女の子がいたので、リアルだと感じました。思春期の苦しさを思い出しました。十代の時に読んでいたらどう感じたんでしょうか?
 舞台である鳥取県境港市のザラザラした空気感が伝わってきます。これって舞城王太郎にも通じている気がします。

 イケメン嫌いな桜庭さんに申し訳ないのですが、友彦に萌えました!映像化・音声化される時は、是非とも石田彰様にお願いします。

 辻原登氏の解説も秀逸。

ラストシーンから始まる物語ですので、ネタバレとかあまり気にせずに書きます。

不思議な読後感です。
藻屑の死について、社会派的な問題提起であるとか、
青春モノとして主人公に何かきっかけを与えるための悲劇であるとか、
推理小説として謎があるとか、
どれも当てはまらないように思います。
ただ、寂寥としたなんとも言えない喪失感が残ります。

深い洞察とかそういった意味ではなく、ただ架空のキャラに対する憐憫として、
藻屑の人生とは何だったんだろう…のような
寂しいふわふわとした残滓がしばらく私の中に残りました。

ものすごい衝撃を受けたとか、飛び抜けて面白かったとか、
そういう感じではないんですが。
なにか残る作品であることは間違いないです。

確かに最初の数ページのあまりの砕け具合に、ラノベってどれもこんな感じなのか?と思った。けど、後半から一気に加速する。読むのを止められなかった。つまらない小説なら、読むのも苦痛になる。自分がどれほど物を知っているか、知識の無駄なお披露目としてやたら文章を難しくする作品には嫌悪感がする。この小説は、その点とても読みやすかった。いちいち無駄にエゴに知識を垂れ流さなくてもこんなに素晴らしい物語は本当に才能のある作家さんには書けるのだと改めて感じた。 思春期に感じた、無力感や明日への恐怖や未来に対してのあるのかないのかわからない僅かな希望にもすがる気持ちや、そんな若い青い感情がよみがえった。そんな時代もあったなと、苦しくてもがいて、何も掴めなかった不器用なあの頃より、私はずいぶん大人になったんだなと涙がこぼれた。 確かにこれはハッピーエンドではないかもしれないけれど、救いがないわけでもない。文庫本にリニューアルされ、気になってはいるけれどラノベだからと読むのに今ひとつ抵抗なんかがある人は、読んで後悔はしないと思います…。

海辺の町に生きる、どこにでもいるけど少し不幸な女子中学生・山田なぎさは、自分を人魚だと名乗る転校生・海野藻屑により、いままでの生活が狂わされた。家族のため、兄のために、生きるための実弾を欲しがっていたなぎさと、砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる藻屑の奇妙な友情を描く青春暗黒物語。

この文庫は最初富士見ミステリー文庫出だされたそうで、ゆるやかなロングセラーにより、新書になって再出版された。

私はこの本で初めて読んだので、これが挿絵付きのライトノベルで出版されていたというのは不思議な感じがした。万人向けではないかもしれない独特な雰囲気を持っていたから。

タイトルからしてそうだけど、言葉の使い方が絶妙で、この人の文章センスが好きだった。

そして物語は冒頭から、ラストがどうなるのかはっきり示されていた。

そう、読み始めた瞬間、残酷な結果を提示される。

でも、そうならないで欲しい。そんな気持ちで読み進められるほど、痛々しくて切なくて、そしてちょっぴり息苦しい物語。

実弾を求める少女。砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる転校生。貴族の兄。

みんな生きるために、自分を守る膜を張っていた。それは誰かのために働くことであったし、嘘で身を守ることでもあったし、自分の世界に閉じこもることでもあった。

痛々しくたたきのめされながらも、現実は死んじゃった子と生き残った子の2種類しかいない。

儚さと無力さを見せつけられる様なお話でした。

良質なラノベは退屈な文学を上回るのだ、と証明している一冊だと思います。普段ラノベを読まない方にも、お薦めです。

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