赤い右手 (創元推理文庫) の感想

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参照データ

タイトル赤い右手 (創元推理文庫)
発売日販売日未定
製作者ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
販売元東京創元社
JANコード9784488134082
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 訳者あとがきに拠れば何故か一部でやたらと評判が高い様だが、パルプ・フィクションの分野で活躍した作者の作品で他に名が残っているのは無い様だから、奇跡的に一発当たったのだろう。実業家の謎の失踪とそれに絡む謎の怪人の暗躍の謎を、偶然巻き込まれた外科医が探って行くと云う体の一人称ミステリなのだが、あちこち関係無い所に話が飛んだり、話の途中で、これこれの登場人物は実は後で殺されるんだとネタバレしてしまったり、妙に思わせ振りな書き方で大事な説明を放置して寸止め状態の儘長々と読者をじらしたり、作者の技量が下手なのか巧妙なミスディレクションなのか区別が付かない儘読み進めなければならないので、傑作なのか駄作なのか、最後まで読まないと判断出来ないと云う難しい代物だ。あとがきでは熱に浮かされた様な文体抜きにしてこの作品は考えられないと云うコメントが紹介されているが、確かに、推理を後回しにして取り敢えず語り手の言うが儘に先へ先へと進んで行かなければならないこの作品の最大の魅力は、その強引な文体であることは否定出来ない。読後に思い返してみると、混乱した語り口が醸し出す悪夢的雰囲気こそがこの作品の高評価の要である気もする。

 諸々の手掛かりが犯人の正体をこの人だと声高に告げていると読者が思い込んでいると、終盤の謎解きでそれが見事に引っ繰り返される、と云うのはお決まりの展開の筈なのだが、綺麗に謎が解明されたにも関わらず、ここまでその謎解きが容易に信じられない、読後感がスッキリしない作品も珍しい。だがこれを傑作と呼ぶ人が居るのも或る意味頷ける。クリスティなどとはまた別の意味で、作品全体が非常にトリッキィな作りになっているのだが、これが偶然の産物なのか作者の技量なのか判別出来ない。評価に悩む怪作である。

原題 The Red Right Hand(原著1945年刊行)
熱病に憑かれた如き癖のある独白体で、猟奇と惨劇に彩られた一夜の顛末を描き、ミステリ史に名を残すカルト・クラシックの復刊。
探偵小説におけるコぺルニクス的転回(国書刊行会版の小林晋氏の解説)とまで絶賛した批評もあれば、石上三登志氏の様に罵倒に近い酷評を下した例もある(小森収インタビュー集『はじめて話すけど…』による)、まさに賛否両論を呼んだ問題作。
読者を捉えて離さない切迫感、アクセル全開で疾走するような、錯綜し起伏に富んだ展開、そして張り巡らされた伏線の妙は実に魅力的だが、読後釈然としない矛盾点が多々残るのは事実で、プロットとトリックの整合性を問うより、如何にもパルプ・フィクション的で過剰な扇情性を愉しむべき作品ではないだろうか。その意味ではエド・ウッドの映画に例えた山口雅也氏の批評が最も的確かもしれない。
究極の離れ技か?まぐれ当たりか?本書の評価は読者のミステリ観に大きく左右される事は間違いない。

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