生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門 (文春新書 930) の感想

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タイトル生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門 (文春新書 930)
発売日販売日未定
製作者松井 孝典
販売元文藝春秋
JANコード9784166609307
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 生物学

購入者の感想

『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議/吉田たかよし著』が面白かったので、アストロバイオロジーという学問分野そのものに興味が湧き、本著を手に取ってみました。

第二章では、神話そしてギリシャ哲学から現代に至るまでの生命起源論の解釈の歴史的な変遷がまとめられています。
紀元前六世紀頃のイオニアの自然哲学者が、すでに地動説を唱えていたり、宇宙には生命が溢れているというアストロバイオロジー的な知見を持っていたことに驚かされました。
一転、アリストテレスから中世のスコラ哲学までは知の暗黒時代が続き、16世紀のコペルニクスの時代になってようやくその停滞から抜け出すこととなりました。
神話世界のタネ本として本文中で紹介されていた『宇宙の変遷/S.アーレニウス (寺田寅彦訳)』は、『宇宙の始まり』というタイトルでネットの青空文庫で無料閲覧可能です。底本は『史的に見たる科学的宇宙観の変遷 (第三書館/1992)』。
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第四章での生物学の基礎知識における遺伝のメカニズムの説明は、文章の記述だけでは素人には理解が難しかったです。『生物と無生物のあいだ/福岡伸一著』で触れられていたように図版で補足説明してもらえれば、もっと理解が容易になると思います。本著作の全般に言えますが、もう少し図版による補足説明が欲しいところです。

生命の起源については、個人的にはパンスペルミア説を推しているのですが、たとえそれが今後確定されたとしても、コモノートが何であるのか、はたまたコモノートは一種類であるのか、そもそもコモノートはあるのかという仮説が解明されなければ、地球上における生命の始まりという謎が解明されるのは、まだまだ先に話のように思いました。
今後は、筆者が期待を寄せているウィルスの科学進化の研究の成果に注目しています。

宇宙探査においては、火星、エウロパ、タイタン、エンセラダスの探査によって、今後何か重要な発見が出てくることに期待しています。
アミノ酸不斉の起源の謎も、2020年に帰還するはやぶさ2で何らかの進展があることに期待しています。

 本書を読むと、アストロバイオロジーというのが取り扱う領域の幅が広い、いわゆる学際的な学問だということがよくわかる。本書の中では、生命起源論の歴史的変遷について詳しく述べられた第2章と、海底の熱水噴出孔付近といった極限環境に生息する生物について解説した第7章が特に興味深かった。

 ただ、全体としてそれぞれの分野でどこまで分かっていてどの部分が未解明なのかが分かりにくい点が残念であった。例えば細胞の材料物質を作る、いわゆる化学進化についても、有名なミラー・ユウレイの実験以来非常に多くの実験が行われたと書かれているが、それによってある物質については太古の地球環境で作られることがわかったが、別の物質については未だに作ることができない、といった説明があれば今後の研究の方向性がよく理解できると思う。特に、細胞を作る場合、本書に書かれているアミノ酸や核酸も勿論必要であるが、加えて細胞膜を構成する脂質(脂肪)の存在が不可欠だと思う。だが脂質合成に関する化学進化の研究については全く言及がなく、研究そのものが行われていないのか、行われているがうまくいっていないのかよくわからない。いずれにしても、本書を読む限りはアストロバイオロジーというのはまだまだ発展途上の学問であると思われる。しかし一方で、例えば現在NASAが火星に送り込み、盛んに生命の痕跡探しを行っている探査車、キュリオシティがひとたび何かを発見すれば一気に研究が進むという可能性もあり、楽しみな夢のある学問分野であるともいえる。

 尚、付言すると本書は文章が読みづらい。同じことが3か所、4か所と繰り返し出てきて、しかもそれぞれで違う表現で説明されたりする。また、宇宙論にしても生物学にしても説明が不正確と思われる個所が目に付いた。例えば、宇宙論における人間原理の説明も最近出された人間原理をテーマとした新書などに書かれていることと少しずれているように思われた。特に生物学の基礎について述べられた第4章は分かりにくい表現が多く(原核細胞と真核細胞の違いや、遺伝子の転写、翻訳なども図を載せれば分かりにくい説明は不要なのに、と思われた)、生物学や遺伝学の基礎的な知識を持っている方はこの章は飛ばして読んだ方が良いかもしれない。

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