秘本三国志〈5〉 (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル秘本三国志〈5〉 (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者陳 舜臣
販売元中央公論新社
JANコード9784122051973
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

購入者の感想

1982年9月文春文庫からでたのものの新装文庫版。まず「赤壁の戦」がなんとたったの50p.弱で終ってしまう。しかも、劉備はこのとき孫権には会っておらず、孔明のみが出向くものの、「100万本の矢」や「東南の風を吹かせた」などのエピソードは全くなし。黄蓋が火責めの任を果たすのみで、なんと孔明は何にもしないで帰ってくるだけである!なので「三国志」ファンはあっけにとられてしまうだろう。全体を通しても孔明はそれらしい智謀を顕すことがなく終ってしまうのであるが、毎章の終わりに『作者、曰く。――』で始まっている三国志に関した資料の膨大な中からの物語の構成は、やはり忠実であると言わねばならぬだろう。実際「正史 三国志」では「蜀史」についての記述がかなり少ないので、劉備、関羽、張飛、趙雲などの記述も陳氏自身、避けたようである。かといって、この巻が面白くない、というわけではないのである。有名な孟浩然や陶淵明、蘇東坡の詩を持ち出したり曹操の詩作も散りばめられながら、孫権と小ずるい劉備(結構、ずるい!)の画策や、早くも司馬懿の若き姿が現れ、また曹操が魏王となってからの太子を曹丕と曹植をどちらにするか、といった問題ですごく面白い芝居が楽しめるので、意外にも目を離すことができない。一応、物語は関羽が散るところまで書かれているが、この関羽も性格が今までにほどない無学で短気、遠慮を知らずの血気盛んな人物として描かれており、関羽崇拝者はあっけにとられるだろう。本作では下敷きに五斗米道の教母少容の存在が巧みに使われていること、また宗教が脈々と入り組んでいるのでとても興味深い。蜀については記述が少ない部分を陳氏自身の著作「諸葛孔明 上・下」で詳しく書かれているので、鬱憤が溜まった方はそちらもお奨めしたい。諸葛孔明なしに三国志はありえないし孔明にとっても三国志がなければ活躍はできなかったのだから。

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