アット・ウォー・ウィズ・リアリティ の感想

メロデスの礎を作り上げたバンドの一つと言われるスウェーデン発「At The Gates」。
実に19年ぶりとなる通算5枚目のアルバム。

メロデスを語るとき彼らが高確率で引き合いに出されることからその功績の偉大さは否応なく知ることができる。

2014年発売の本作は、結論から言うと良くも悪くも彼らである。
後にイエテボリスタイルと呼ばれた、暴虐性の中に叙情的な音を交錯させて疾走するデスメタルサウンド。
そのスタイルは本作でも遺憾なく発揮され、彼らがそのオリジナルだということを改めて認識することができる。

彼らの代名詞と言える「Slaughter Of The Soul」の延長線上にあることは少なからず連想させられる。
しかしSotSで見られるある種の快活さ・衝動性は多少鳴りを潜め、より薄暗いメロディックさが際立っている。
決して勢いが衰えたわけではない。メロディの冴えは相変わらずでむしろ「説得力」が増したと言っていい。

特筆すべきはやはりツインギターの絡みにある。
攻撃的なデスメタルサウンドに織り交ぜられる美しく、しかし甘すぎない悲壮感。
派手なシュレッディングパートがなくともギターの叙情的な絡みだけでここまで魅せてしまうのは流石と言える。
そしてそれを支え躍動するリズム隊に独特の狂気をもつトーマス・リンドバーグの咆哮が合わさったメタルを聴けば、
なぜ世界中に彼らのフォロワーがたくさんいるのかを容易に理解することが出来るだろう。

そんな今日においては流布されきったスタイルは、リアルタイムで聴いた4thには衝撃度で劣るのかもしれない。
しかし同郷の様々なバンドが音楽的に変遷する中、自分達のルーツを守り復活してくれた彼らに賞賛の声を送りたい。

先駆者にしてベテランの風格が漂う彼らの、深みのある傑作メロデスである。
なおボートラ3曲が違和感なくアルバムに溶け込んでいて非常にカッコイイのでこれらが入った盤の購入を推奨する。