オセロー (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルオセロー (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者シェイクスピア
販売元新潮社
JANコード9784102020029
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 戯曲・シナリオ » イギリス・アメリカ

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ヴェニスの将軍にまで上りつめた勇敢なムーアの武人オセローは、ヴェニス
の議官ブラバンジョーの娘デズデモーナと、その父の反対に遭いながらも結
ばれる。しかしその裏では、彼の腹心とその女を我が者にしたいと狙う男た
ちによって、ある巧妙な策略の糸が張り巡らされようとしていた…。

シェイクスピアの四大悲劇の一つに数えられるその名も『オセロー』は、愛情
の高まりが強いほど、その反動としての嫉妬と怒りも強まるということを例証
しているようにも思える。イアーゴーによる巧妙な策略によって、オセローとデ
ズデモーナとの永久とも思えた愛情は軋みを挙げながら崩れ始める。

しかし重要なことは、それがオセローの内面にのみで起きた疑心にすぎなかっ
た、ということだ。悩める者の助けになろうとしているデズデモーナには、オセ
ローへの愛情を曇らすような疚しい感情は一点もない。どんな種火でも大火災
になることはある。いや、実際には種火さえいらない。火のないところにも煙は
たつのだ。

ということで、この戯曲を読み終わったとき、我々現代人が読み取るべき「悪」
とはなにかが、わからなくなってくるのだ。それはイアーゴーという知恵を他人
を精神の奈落に陥れる狡猾さとしてしかつかえない愚者なのだろうか。それと
も、オセローという最愛の者を信じずに信頼のおける腹心の言葉を盲目的に信
じつづけた実直な愚者か。

終幕においてイアーゴーと決別し、ようやくオセローは自分がだまされていたこ
とに怒っているのではなく、だまされて怒らされているということに気がつくのだ
けれど、最愛の人を骸にした後では遅すぎる。オセローは悲劇の英雄のようで
いて、実は真っ先に断罪されるべき「共犯者」の側面もあるように思える。

嫉妬の悲劇。高潔で義に厚いムーア人の将軍オセローは、

旗手イアーゴーの謀略・奸智にひっかかって、優しくて

無垢な心の持ち主の妻デズデモーナが不義を副官キャシオウと

犯していると妄想してしまう。

デズデモーナの優しさと広大な愛の心に涙が止まらない。

大詰めのオセローの罪悪感と痛みも、又、悲しい。

悪のヒーローイアーゴーのキャラクターも印象的。

舞台化を意識しつつ、美しい日本語を以て訳された福田恒存氏の

名訳は読むたびに感銘を受ける。読みながら、自分が舞台に

立っているような錯覚を覚えることさえある。

声を出しながら読むことをお薦めしたい一冊である。

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