ひとりの午後に (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルひとりの午後に (文春文庫)
発売日2013-09-03
製作者上野 千鶴子
販売元文藝春秋
JANコード9784167838775
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » あ行の著者

購入者の感想

 著者、還暦を過ぎての「なかじきり」かと読み始めた。鴎外の「なかじきり」は、かなり言い訳がましい文章だけれども、上野のこれは、すっきりとしていて小気味よい。
 「ひとりでいられる時間と空間とスキルさえあればいい」ということを書いたのだと最終章の終わり近くにある。本書を「ひとり主義」称揚の書かと思い違いしてはならない。自分は「ひとり」がいいというだけのこと。
 しかし、ひとりの上野千鶴子がひとりで生まれたわけではないから、まずはその両親についてから書き始めている。ご両親を愛し、尊敬しではなく、反発と拒否、その両親のいる家から脱出して自分が新たに作られた。としながら、最近のことか、三歳まで「ちづこ」の世話をしてくれた人に会って、その人を「大切にしたい」と書いている。その人は「普通の人」である。結婚し、子を産み育てている。そういう人をも大切にしたい。つまり、ひとりではあるけれども、「大切な人」をも持つのだというのである。このあたりが『ひとりの午後に』以降の「上野千鶴子」を占うものかもしれない。もっとも、ひとりながら友人を大切にするのはこれまでもそうだったから、続いてはいる。
 「1 思いだすこと」で戦後日本の過ぎしことと現在とを整理。「ひとり」でいることが不思議ではなくなった経緯が分かる。「2 好きなもの」は「私」の公開である。いかに「自分を生きているか」が書かれている。とはいえ、たとえば「俳句」の章で、自作句を紹介していない。隠し財産はまだ多くあるのだろう。「3 年齢を重ねて」。「4 ひとりのいま」。同年生まれの井上陽水。彼のコンサートには行ったことがないけれども、CDはほとんど買い求めたといい、陽水の歌手活動四〇周年を記念するライブに参加したという。しかし、そこで見た陽水は衰えていたとし、「衰えもまた芸にして見せてほしい」と書く。これは、自分自身に返ってくることと承知していよう。
 これから、日本の高齢社会での老齢者の生き方、暮らし方を上野千鶴子がどう見せ、提言するか。その初めの書が本書であると七七歳の老愚生は読んだ。

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