人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書) の感想
参照データ
タイトル | 人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 最上 敏樹 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784004307525 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 国際政治情勢 |
購入者の感想
「人道的介入」を学ぶ上で、必読の好著です。
ただ、最後の「和解」についての議論では、和解を達成するためにはどうすればいいのかということに関し、具体的なことがほとんど論じられていなかったのが残念です。
「和解」ということまで視野に入れた広がりのある議論をしているのに、議論が緊急人道救援に偏り過ぎているのではないかとも思いました。近年、よく耳にすることは、緊急人道支援から国土復興、復興後の開発支援まで「切れ目」のない支援を行うことで、内戦などで荒廃した不安定な地域を安定化させ、紛争の火種をなくしていく努力の重要性であり、こうした努力は「和解」のための環境を醸成するとも思うのですが…。
紛争当事者の合意が得られて活動できるとは必ずしも限らないことが多くなった現在、内戦などで脆弱になった地域において、息の長い支援活動を行う際の、軍事的なものから非軍事的なものに至るまでの様々な支援活動についても、もっと触れてほしかった。
ただ、最後の「和解」についての議論では、和解を達成するためにはどうすればいいのかということに関し、具体的なことがほとんど論じられていなかったのが残念です。
「和解」ということまで視野に入れた広がりのある議論をしているのに、議論が緊急人道救援に偏り過ぎているのではないかとも思いました。近年、よく耳にすることは、緊急人道支援から国土復興、復興後の開発支援まで「切れ目」のない支援を行うことで、内戦などで荒廃した不安定な地域を安定化させ、紛争の火種をなくしていく努力の重要性であり、こうした努力は「和解」のための環境を醸成するとも思うのですが…。
紛争当事者の合意が得られて活動できるとは必ずしも限らないことが多くなった現在、内戦などで脆弱になった地域において、息の長い支援活動を行う際の、軍事的なものから非軍事的なものに至るまでの様々な支援活動についても、もっと触れてほしかった。
初めて本書を読んだときには、問題なく素晴らしい本であると感じ、著者の見解に全面的に同意したのですが、改めて読み直すと、著者の国連中心主義的な見解に関して、多少気になる部分が出てきました。以下、それに対する批判を少し述べさせて頂きます。
私自身は著者のように、国連を神聖化した見解は持ちませんが、これをとやかく言う気はありません。ただし、著者が表面的には国連重視を訴えながら、その都度過去の事例で国連を批判する姿勢は気になります。例えばまずソマリアについて。著者はソマリアで、明白な人権蹂躙は起きていなかったと考えているようですが、実際には現地を牛耳るアイディード将軍は、国連からの援助物資を強奪し、敵対勢力(非戦闘員も含む)を飢餓や病気で苦しめるために使いました。だからこそ国連は武力介入せざるを得なくなったというのが実状ですが、こうした武装勢力の非道に対して、著者からの言及はありません。ベトナムのカンボジア介入に関しても同様で、国連が批判したのは、カンボジア介入そのものではなく、むしろその後のベトナムによるカンボジアの支配です。ポルポト派の駆逐自体は、素晴らしい行為ですし、私自身も大いに評価します。しかし問題なのは、その後20年近くカンボジアを占拠し、共産主義体制をカンボジアに押し付け、政治の中枢からカンボジア人を締め出したこと、反対派を処刑したこと、さらには国連の人道機関さえも、カンボジア国内から締め出したことです。この行為がなければ、ベトナムの介入は大いに評価されたはずですし、ベトナム自身も経済制裁で最貧国に転落することもなかったでしょう。
以上批判的なことを書きましたが、ベンガル問題、ユーゴ問題などに関する丁寧な議論はおおむね評価できます。国際貢献について考えるに当たって、読んでおいて損はない1冊だと思います。
私自身は著者のように、国連を神聖化した見解は持ちませんが、これをとやかく言う気はありません。ただし、著者が表面的には国連重視を訴えながら、その都度過去の事例で国連を批判する姿勢は気になります。例えばまずソマリアについて。著者はソマリアで、明白な人権蹂躙は起きていなかったと考えているようですが、実際には現地を牛耳るアイディード将軍は、国連からの援助物資を強奪し、敵対勢力(非戦闘員も含む)を飢餓や病気で苦しめるために使いました。だからこそ国連は武力介入せざるを得なくなったというのが実状ですが、こうした武装勢力の非道に対して、著者からの言及はありません。ベトナムのカンボジア介入に関しても同様で、国連が批判したのは、カンボジア介入そのものではなく、むしろその後のベトナムによるカンボジアの支配です。ポルポト派の駆逐自体は、素晴らしい行為ですし、私自身も大いに評価します。しかし問題なのは、その後20年近くカンボジアを占拠し、共産主義体制をカンボジアに押し付け、政治の中枢からカンボジア人を締め出したこと、反対派を処刑したこと、さらには国連の人道機関さえも、カンボジア国内から締め出したことです。この行為がなければ、ベトナムの介入は大いに評価されたはずですし、ベトナム自身も経済制裁で最貧国に転落することもなかったでしょう。
以上批判的なことを書きましたが、ベンガル問題、ユーゴ問題などに関する丁寧な議論はおおむね評価できます。国際貢献について考えるに当たって、読んでおいて損はない1冊だと思います。