アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトルアフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者松本 仁一
販売元岩波書店
JANコード9784004311461
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

再掲

多くのアフリカ関連の本が2008年のTICAD(東京アフリカ開発会議)に合わせて出版された様だ。この本もまさにそうなのだろうが、筆者のアフリカへの想いは愛情に近いのではないかと思う。氏の著作「アフリカを食べる」「アフリカで寝る」は興味本位のテレビ番組と違うアフリカを見せてくれる。僕の記憶に間違いが無ければ松本さんは1984年頃にナイロビで朝日新聞の特派員をしていたと思う。そして「沈まぬ太陽」の主人公モデルの小倉さんもJALのナイロビオフィース(JALにアフリカ路線はないのだが)にいらっしゃったのではと。(間違っていたらごめん)
さて、今回の書であるが、読みだして胸が苦しくなる。アフリカと言う単語でアフリカの国々を語ってはいけないとは思うのだが、残念ながら松本さんのレポートが多くは的を得ている。特に酷いジンバブエの経済、オイルや鉱物資源利権に政治家汚職がはびこる(農産物利権も当然あるだろう)。松本さんによれば、問題の無い国はボツワナだけであり。次に良いと思われる(国づくりに意欲があるが、運営手腕が未熟で進度が遅い)のはガーナ、ウガンダ、マラウイなど10カ国ていど。その次のカテゴリーは政府幹部が利権を追い求め国づくりが遅れている。そして最後のカテゴリーは指導者が利権にしか関心を持たず、国づくりなど初めから考えてない国家、だと。
さらに現在の市場主義がアフリカ全体を覆っている、中国のアフリカ進出は資源獲得、中国人労働者雇用、そして中国製品の市場開拓が狙いである(もちろん他国も程度の差こそあれ同様だろうが)と本書は指摘している。さらに国を捨てるアフリカ人を日本、パリで取材している。そこから見える彼ら母国の現状。
本書における若干の明るいアフリカの未来は、NGO活動やアフリカで活動する日本人社長の紹介である。
本書を読み終えて思った。
他人に勝手に引かれた国境線の中に閉じ込められ、イデオロギーに翻弄され、貨幣経済のなかでGDP等の数字で語られるアフリカの国々の悲劇である。現在でも多額のODAがアフリカ諸国に流入し、民間の援助も入っている。果たして本当に国の援助は現地で役立っているのか?先進国と同じ価値観や経済システムを無理強いしていないのか?

20世紀に植民地を抜け出して次々と独立を果たしたアフリカの政治的な腐敗、中国人の進出、民間レベルでの支援を綴る。

基本的にアフリカはどの国も貧しく、民族的な対立が国内に燻り、多数派が少数派を抑圧している。
内戦が頻繁に起こり、政権を獲得した政治家は自己保身や汚職に走り、国民は物価高や物資不足に苦しむ。
それが繰り返された結果、貧しい人の多くは国家を見捨てて他国へ逃げ出すことになる。
日本でも近年、アフリカ人の流入が多くなり犯罪の増加が懸念されている。

先進国からの多額の援助は勿論、日本からも行われているが、そういった援助が国民に還元されているか?疑問に思う日本人は少ない。
腐敗した政府首脳がそういった多額の援助を自らの私腹を肥やすことにしか使わないため、国民の生活はいつまで経っても良くならない。
終いには白人や外国人が利権を独占しているなどと「責任転嫁」での敵を作る行為を正当化し、政権の延命を図る。
国民の中には国の将来に悲観して国外へと脱出していく者が後を絶たない。
人材の流出は国にとってマイナスである。要は「悪循環の連鎖」だろう。

さらに教育のレベルが低いから殺人・強盗などの凶悪犯罪は後を絶たず国家としての体を成していないのである。
しかし、一方でそんなアフリカに豊富に眠る地下資源(主に石油である)に目を付けた中国の国家レベルでの「援助」は攻勢を増す。
彼らは現地人を雇わず自国の中国人を現地で働かせることで雇用を確保する。つまり雇用は生み出しても現地人にお金は落ちないのだ。
それを許す現地政府は正しく「売国奴」に相応しい。

結局、いつまで経っても政府は動かないので、民間レベルで行動するしかないという結論である。
かといって「無償の援助」はその場限りになってしまい、現地人の自立を生まないので却ってマイナスであるようだ。
現地人に「成功体験」を積ませることで、自分たちでも出来るのだという自信を持たせることが重要。
彼等はずっと貧しいままで来ているので「豊かになる」ことに飢えている。

アフリカとそこに住む人々に共感を持つものとして大いなる期待感をもって読み始めました。
たしかに、優れたレポートで、したたかな中国人の進出の現状などなんとなく体感していることが、具体的に書かれており興味深く読みました。 しかし、個別的なストーリーは面白く参考になるのですが今ひとつ充足感に乏しいのです。なぜかと考えてみると理論的な枠組、歴史観といったもののプレゼンが弱く、上質なルポルタージュの域を超えていないと思われるからです。
従って、アフリカの現状をスナップショット的に見るのには好適な本です。 その上で「最底辺の10億人」や「新書アフリカ史」といった骨太の本を続けて読むことによって複雑なアフリカ問題の総合理解が進むように思われます。 なお、レビューワーは、星5 買ってでも人に勧めたい、 星4 良い本で自宅に保存したい、 星3 なにか得るものがあった、  星2 買うんじゃなかった 星1 読むんじゃなかった との基準で評価していますので念のため。

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